個人再生手続き中にやってはいけないこと
個人再生でやってはいけない13の注意点を具体的に紹介します。個人再生の際は事前に弁護士に依頼し、注意点をよく確認しながら進めましょう。個人再生でやってはいけないことをするとどうなるのか、個人再生が失敗した場合の対処方法、個人再生手続きをスムーズに行う方法についてもまとめました。
個人再生でやってはいけないこと

個人再生手続きを行う際、やってはいけないことを13項目にまとめました。数が多いように思えますが、誠実で正直な態度を心がければ、難しいことではありません。
(1)弁護士に依頼せずに個人再生を行う
(2)弁護士の指示に従わない
(3)弁護士や裁判所に虚偽の説明をする
(4)書類の不備や誤りを訂正しない
(5)費用が用意できないのに申し立てる
(6)再生計画案の提出期限を守らない
(7)ギャンブルなどの浪費行為をする
(8)一部の債権者に優先的に弁済する
(9)履行テストできちんとお金を振り込まない
(10)新たな借金をする
(11)退職や転職などの収入を減少させる行為
(12)弁護士を通さずに債権者に直接連絡する
(13)再生計画認可後に計画通りに弁済しない
個人再生手続きのルールに反してしまった時は、気が付いた時点で弁護士に相談しましょう。早めに対処すれば影響を最小限に抑えられます。
以下に具体的に解説します。
(1)弁護士に依頼せずに個人再生を行う
個人再生は債務整理の中でも特に手間がかかり、再生計画案作成の際には正確さも要求され、法律の専門家に依頼する必要性が高い手続きです。制度上は本人のみでも申立てが可能ですが、弁護士に依頼せずに個人再生をすると失敗する可能性が高いです。
日弁連の「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/publication/pamphlet/2023_hasan_kojinsaisei.pdf)」によれば、2023年の個人再生申立てのうち、弁護士に依頼しているケースは88.1%、司法書士に依頼しているケースは10.35%と、合計98.45%の人が専門家に依頼しています。
弁護士だけではなく、司法書士も個人再生を受任できます。しかし、司法書士が個人再生の債務者の代理人となれるのは、債権者1件あたりの140万円以下の場合に限られます。一社でも140万円を超える借金をしている場合は、弁護士に依頼しましょう。
「専門家に頼むと費用が高くなるよね…」と心配になると思いますが、債務整理に関しては、多くの法律事務所が無理なく費用を支払えるよう、分割払いなどの制度を用意しています。相談も多くの法律事務所が無料で受け付けていますので、まずは相談されることをお勧めします。
(2)弁護士の指示に従わない
弁護士は法律の専門家として、個人再生が成功するように適宜アドバイスや指示を出しています。指示を無視したり、あるいは「こうしたほうがいい」と自己判断してアドバイスに従わなかったりすると、手続きが遅延したり、最悪の場合は個人再生の申立てが裁判所に却下されます。
専門家に出された指示には素直に従い、疑問がある場合は「なぜ、そうする必要があるのか」と理由を尋ねてみましょう。
なお、ほとんどの弁護士は誠実に仕事をしていますが、稀に悪質な弁護士に出会ってしまうことがあります。「この人の言っていることはどうもおかしい」と思ったら、他の弁護士にも相談してみる、その弁護士の所属する弁護士会の市民窓口に相談するなどといった処置をとってください。
(3)弁護士や裁判所に虚偽の説明をする
弁護士や裁判所に、特定の債権者だけを申告しなかったり、収入や持っている財産を偽って申告したりするなどしてはいけません。裁判所に発覚すると再生計画が認可されなくなり、悪質だと判断された場合は、不正な申告をしたとして罰則の対象になる恐れもあります。
以下のような行為は、虚偽の申告に該当します。
・親族や友人からの借金を申告しない
・財産を隠す
・財産の評価額を実際より低く申告する
虚偽の申告をした場合、申立てを棄却されたり、途中で手続きが廃止されたりして、個人再生ができなくなります。さらに、「詐欺再生罪(民事再生法255条1項)」に問われるおそれがあります。
また、弁護士や裁判所から説明を求められた際に、虚偽の説明をしたり、説明自体を拒否したりすることもNG行為です。
(4)書類の不備や誤りを訂正しない
書類に不備を発見したり、誤りを指摘されたりした場合は、できるだけ早く修正しましょう。
必要書類を用意する際は、注意深く、間違えずに記入する必要があります。しかし、人間だれしも間違えることはあるでしょう。誤りに気が付いた時点で、早めに直すことが大切です。
提出書類に不備や誤りがあると、裁判所から「補正命令」が出て、これを直さずにいると手続きが途中で打ち切られることがあります。
(5)費用が用意できないのに申し立てる
個人再生手続きの際は、弁護士費用のほかに、裁判所に支払う申立て費用が発生します。費用が用意できないまま申し立てると手続きが立ち行かなくなります。費用に関しては弁護士と相談の上、計画的に準備して用意するようにしてください。
弁護士費用は、一般的に、正式な契約時に支払う着手金が30万円程度、成功報酬が20~30万円程度の計50~60万円程度かかります。住宅資金特別条項を定める場合は、それよりも増額となることが多いです。分割払いに対応している事務所もありますが、その場合でも、多くの事務所では、全て費用を支払つた後に裁判所に申立てることになります。
裁判所に支払う費用は、20~30万円程度で、原則として申立ての際に一括払いする必要があります。一部の裁判所では分割払いに対応していますが、全ての支払いが終わるまでは、手続きが進みません。
(6)再生計画案の提出期限を守らない
再生計画案の提出期限は厳守してください。1日でも締め切りに遅れると再生手続きが廃止となります。今までの手続きが無駄になってしまうので、この期限は特に注意してください。それ以外の書類も、必要書類は早めに調達・作成するよう心掛けてください。
(7)ギャンブルなどの浪費行為をする
ギャンブルや無駄遣い、高価な趣味の品の購入、旅行、キャバクラやホストなどの風俗の利用など、生活に必要ないことに多額のお金を費やすことはしてはいけません。収入を借金の返済に充てずに浪費すると、誠実さが疑われ、また返済計画に従って弁済できない人と判断されて個人再生に失敗します。
(8)一部の債権者に優先的に弁済する
特定の債権者だけに優先的に弁済することを「偏頗(へんぱ)弁済」といいます。個人再生の直前に偏頗弁済をしてしまうと、再生計画案が認められなくなる可能性があります。個人再生手続きには「債権者平等の原則」と言って、債権者は平等に取り扱わなければならないというルールがあるからです。
また、偏頗弁済をすると、偏頗弁済をした金額も考慮して減額後の返済額が決定されるため、当初予定していたよりも金額が高額になる可能性があります。
身内や友人などからの借金や保証人がついている借金などは、迷惑をかけたくなくて優先的に弁済したくなりますが、手続き上問題になりますので、偏頗弁済をしないよう注意してください。
(9)履行テストできちんとお金を振り込まない
多くの裁判所では、「履行テスト」と言って、申立人が減額後の借金をちゃんと支払える人か試すテストがあります。履行テストは、毎月、テスト用の口座に指定された金額を振り込む方法で行われます。これを毎月きちんと実行しないと、再生計画が遂行される見込みがないと判断され、不認可になる可能性が高いです。
(10)新たな借金をする
「これから借金が減額されるんだから、今のうちに少しくらい借金をしてもかまわないだろう」などと考えて、手続き中に新たな借金をすると、悪質な申し立てと判断され、個人再生が認められない可能性があります。
申立て後は金融機関や貸金業者等からは新たな借金ができなくなりますが、友人・知人等の個人からは借りられるので、安易に借りてしまわないように注意してください。
(11)退職や転職などの収入を減少させる行為
手続き中には、退職など収入が減る行為はしないで下さい。個人再生の場合、再生計画に従って借金を返済していく手続きのため、収入が減ってしまうと、再生計画が認可されなくなる可能性があります。
また、転職すれば収入が増加する見込みがあっても、転職したばかりのころは十分な収入を継続して得られるか不明瞭と判断され、手続きが失敗する可能性もあります。個人再生手続きが終わるまでは、収入増加の見込みがある転職であっても避けたほうが良いでしょう。
(12)弁護士を通さずに債権者に直接連絡する
債務整理を依頼した後は、債権者の金融機関等には弁護士を通じて連絡をとるようにしてください。弁護士を通さずに直接連絡を取ると、債権者に対して不要なプレッシャーを与えたり、債権者間の公平性が保てなくなったりする可能性があります。中には、不当な要求をしてくる債権者もいるかもしれません。面倒かもしれませんが、手続きの公平性を保つために、弁護士を通して連絡することを守ってください。
(13)再生計画認可後に計画通りに弁済しない
再生計画が認可された後に、約束通りに返済をしないと、再生計画が取り消され、借金が減額されずに残ります。必ず、最後まで滞りなく返済を続けてください。
天災や急病、勤め先の倒産など、やむを得ない事情で、どうしても計画通りに弁済できない場合は、至急弁護士に相談してください。債権者に事情を説明して、同意を得られれば、返済計画案の延長などの変更が可能になります。
個人再生でやってはいけないことをするとどうなるのか?
個人再生でルールに違反し、手続きに失敗すると、以下のデメリットが生じます。
(1)借金が減額されない
借金は減額されないだけではなく、手続き中の利息や遅延損害金も含めて、全額を一括で返済するよう求められる可能性があります。
(2)手続き費用は戻ってこない
弁護士や裁判所に支払った費用は戻ってきません。
(3)犯罪に問われる可能性がある
裁判所に虚偽の申告をしたことが発覚した場合、「詐欺再生罪(民事再生法255条1項)」に問われるおそれがあります。
(4)弁護士に代理人を辞退される
裁判所に申し立てを行う前のルール違反であっても、悪質な場合、弁護士が代理人を辞退する可能性があります。
個人再生が失敗した場合の対処方法
個人再生に失敗してしまった時は、以下の対処法があります。
(1)再度個人再生を申し立てる
個人再生の途中で失敗しても、もう一度やり直せます。
例えば、個人再生に失敗した原因が、「再生計画案が認可されなかった」というケースでは、何が原因で認可されなかったのか検討の上、変更や修正を行って再度の申し立てを行えば、認められる可能性があります。
具体的には、借金の免除額を下げて返済額を増やしたり、債権者の反対により失敗した場合はその債権者との協議を行ったりするなどの対応を行います。
ただし、不認可になった後に再度手続きをする場合は、裁判所や再生委員からのチェックも厳しくなります。個人再生では難しい場合は、自己破産など他の債務整理も検討しましょう。
(2)自己破産をする
個人再生が難しい場合でも、自己破産に切り替えて手続きを行うことは問題ありません。会社事情による収入の低下など、個人再生が続けられない事情がある場合は自己破産を行います。
自己破産をすれば借金を帳消しにできますが、個人再生にないデメリットもあるため、弁護士とよく検討してから行ってください。
(3)(再生計画に沿って返済できない場合)再生計画の変更かハードシップ免責を申し立てる
再生計画は認可されたものの、やむを得ない事情で計画通りの返済が難しくなったのであれば、再生計画の変更が可能です。条件を満たせば、最長で2年間返済期限を延ばすことが可能です。
また、借金総額の4分の3以上を返済していることなど、条件に当てはまれば「ハードシップ免責」という制度により借金の残額の支払いが免除されます。
いずれにせよ、返済が困難になったら早めに弁護士に相談してください。
個人再生手続きをスムーズに行うために
個人再生をスムーズに進めるためには、第一に、債務整理が得意な弁護士に相談されることをお勧めします。個人再生は債務整理の中でも特に煩雑な手続きのため、過去にも個人再生の案件を受けたことがあり、全体像を理解している弁護士に依頼してください。
弁護士も数が多く、債務整理が得意な弁護士ばかりではないので、債務整理に明るい弁護士に頼むのがコツです。
その他のポイントとして、必要書類は早めに準備しましょう。また、借金問題解決を弁護士任せにするのではなく、ご自身でも、借金の額や全体の状況を正確に把握し、実現可能な再生計画案を良く練ってください。依頼人が個人再生に前向きであれば、それだけ手続きも素早く進むでしょう。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑


