自己破産手続きで浪費がバレるのはなぜ?
借金の原因が浪費でも自己破産ができますが、手続き時に浪費をすると確実にバレる上、自己破産に失敗します。自己破産手続き時、どこまで何を調べられるのか、財産の調査方法についてまとめました。財産隠しがバレる理由についても解説します。自己破産に失敗すると借金がそのまま残るので、嘘をつかず正直に申告しましょう。どうしても残したい財産がある場合、弁護士に相談してください。
目次
自己破産手続き時、どこまで何を調べられるのか?

自己破産する際には、破産者の財産や借金の金額、借金の理由などを徹底的に調べられます。裁判所には財産目録や家計の収支表を作成して提出するほか、保有する全ての預金口座の通帳の写しも提出します。その際、不審な入出金履歴が無いかもチェックされ、浪費をしていないかを確認されます。
自己破産で調査対象となるのは、以下の3点になります。
(1)破産者が所有する財産
(2)借金の金額や内容
(3)免責に関する内容
このような調査が行われるのは、自己破産によって免責されるためには「借金の支払いが不能であること」を証明する必要があるからです。
裁判所に「借金の返済が苦しくてもう払えません」と申し立てても、売れば借金の大半を返済可能な財産等を持っていれば、「あなたには借金を返す余力があるでしょう」と判断されます。
あるいは、借金の原因が、ギャンブルや贅沢な遊びにお金を使っていたせいならば、「免責不許可事由」に該当します。免責不許可事由とは、借金が帳消しになる制度である「免責」を受けられなくなる事由のことです。
実際には、ギャンブルや浪費が原因の借金であっても、「裁量免責」により免責されることがほとんどです。これは、裁判所が事情をよく調査した上で、この人ならば免責しても良いと判断した場合に、裁判官の裁量で免責を認めるものです。
裁量免責を認めてもらうためには、少なくとも弁護士に依頼した時点で、ギャンブルや浪費はきっぱりやめ、自己破産手続き中は無駄遣いを控えてつつましやかに過ごしましょう。自己破産手続き中に浪費したことが発覚した場合、自己破産に失敗する可能性が非常に高くなります。
裁判官も、裁判所によって選任される破産管財人も、破産事件のプロですから、おかしなお金の動きや、財産隠しの兆候があればすぐにばれてしまいます。素人が隠し通すことは難しく、また、発覚した場合のリスクが大きいため、裁判所には正直に申告しましょう。
(1)所有財産の調査方法
自己破産の際、破産者は、申立書などと同時に「財産目録」を作成して裁判所に提出します。裁判所は財産目録に基づいて債務者の財産を把握します。
また、手続きが管財事件となり、破産管財人がいる場合は破産管財人の事情聴取が行われます。破産者あてに届いた郵便物も、破産管財人がチェックします。
破産者が一定額以上の財産を持っている場合、「破産財団」に組み込まれ、換価処分されて債権者に配当されます。破産財団に入る基準は裁判所によっても異なりますが、東京地裁の場合、対象となるのは原則として以下の財産です。
・99万円を超える現金
・合計して20万円を超える預貯金
・換金して20万円以上の価値がある財産
例えば、売却価格20万円を超える日本刀を所持していた場合は、破産財団に組みこまれ、手放すことになります。
他方、家財道具や20万円以下の価値の雑貨などは、引き続き手元に置くことができます。
特に価値のありそうな車や宝石などの高価品については価格や状態なども調べられ、破産者名義の家を持っている場合は現地調査も行われます。不動産鑑定人と裁判所の職員がやって来て調査を行いますので、近所の人にバレる可能性が高いことには注意が必要です。
仮に、財産目録に記載すべき財産を記載しなかったり、不当に低く評価した金額を書いたりした場合は、免責不許可事由となります。また、裁判所や破産管財人に虚偽の説明をしたり、手続きの妨害をしたり、協力しなかったりすると、免責が許可されなくなるリスクが非常に高まります。
最悪の場合、詐欺破産罪に問われる恐れもありますので、財産目録には全ての財産を正確に記してください。
(2)借金の金額や内容に関する調査方法
自己破産の際、破産者は「債権者一覧表」を作成して裁判所に提出します。これに基づき、裁判所は破産者が、「どこから」「いくら」「どんな内容の」借金をしていたのかを丁寧に調べます。
借金先が企業なのか個人なのか、債権者は何人(何社)なのか、借金の金額などを調査し、借金の総額に間違いがないかを裏付けていきます。
また、裁判所は「破産手続開始通知書」を各債権者に発送します。この書面には免責に関する意見を述べる期間が記載されています。
特定の借金だけを隠したり、優先して弁済したりすると、後で裁判所に見つかった際に自己破産が認められなくなる可能性があります。家族など親しい人からの借金であっても、また、金額が少額であっても、必ず申告をしてください。
(3)免責に関する内容に関する調査方法
破産者が提出した書類をもとに、裁判所は「この人を免責しても良いか」をチェックします。
自己破産すると全ての借金が帳消しになるため、債務者にとっては非常に強力な効果があります。その反面、お金を貸した債権者にとっては、正当に貸したお金が返ってこなくなるため、損害を受けます。
そのため、どんな場合でも免責を認める運用にはなっておらず、「免責不許可事由」という、免責を認めない事情が規定されています。
免責不許可事由の例としては、以下があります。
・浪費やギャンブルなどで借金を作った
・財産隠しなど裁判所に嘘をついた
・裁判所の調査に協力しなかった、不誠実な言動があった
・クレジットカードで買った商品を現金化した
・過去7年以内に自己破産をして免責を受けた
また、これに合わせて、本当に借金を返済できない状態なのかも調べられます。仕事の状況や隠し財産はないか、家族の援助は受けられるのかなどについても調査されます。
自己破産で問題になる浪費とは
浪費とは、社会的に許容できる範囲を大きく超えた支出をして、著しく財産を減らしたり、大きな借金を作ったりすることを言います。
浪費に当たるかどうかは、明確な基準があるものではなく、当時の消費に対する価値観や、破産者の収入などの状況に照らして判断されます。
実際の自己破産で浪費とされる例としては、以下のものがあります。
・ブランド品、ぜいたく品を頻繁に購入する
・キャバクラや風俗の利用
・スマホゲーム等への重課金
・頻繁な飲み会や高級店での外食
・旅行やゴルフ、アイドルの応援などの趣味に多額のお金を使う
・高価な美容品やエステなどへの課金
これらの行為が全て浪費に当たるのではなく、例えば半年に一回行った、と言うことでは浪費とは認められにくいでしょう。ご自身の収入や状況で、浪費にあたるか判断がつかない場合、弁護士に相談してみましょう。
自己破産手続きを弁護士に依頼したら、浪費行為はしないで下さい。発覚すると免責を受けられなくなる可能性が高まります。
また、自己破産の手続きが終わり、無事に免責された後も浪費は控えましょう。一度自己破産をするとその後7年間は再度の免責は受けられません。また、7年経った後も、2度目の自己破産は裁判所の審査が厳しくなります。浪費が原因で2回目の自己破産をすると、裁量免責が認められない可能性が高いのです。
浪費がやめられない場合は、家計簿をつけて管理をする、家族にお金の一部を預けるなど、浪費をやめられるよう工夫をしてみましよう。こうした努力は、裁判所が免責にプラスの意味で考慮してくれることがあります。
財産隠しは可能なのか?
自己破産の過去1~2年の通帳の履歴は、自己破産手続きの専門家が綿密に調査し、不審な点が無いかをチェックされます。自己破産を考えるほど懐具合が危うくなってから財産隠しをしようとしても、まず100%バレます。
ありがちな財産隠しのパターンと、発覚の仕方についてご紹介します。
(1)預金口座にお金を入れておくと処分されるため、引き出してタンス預金をする
通帳の履歴から引き出したことが分かるため、「この引き出したお金は何に使いましたか?」
と質問されます。説明できず、何に使ったか証拠も残っていないお金の引き出しがあるときはまず財産隠しを疑われます。
財産隠しをしていなくとも、自己破産前の銀行口座の入出金に関しては、何に使ったかメモを取る、レシートを残しておくなど、説明できるようにしておきましょう。
(2)親しい人に貴金属や車などの財産を預かってもらう
お金ではなく物品ならばバレないと思いがちですが、財産を購入した際、銀行口座やクレジットカードなどにお金を使った履歴が残るので、調査の際に追及されます。
破産管財人が注目するのは、換金できるほどの高額の財産です。高価な品物を買って覚えていないはずがないので、嘘をついてもバレます。
また、車の名義変更を行った場合、過去2年以内であれば申告しなくてはなりません。自分の車を取られるのが嫌だからと家族名義にしてもバレてしまいます。
別の理由があって名義変更を行った場合、理由を正直に裁判所に説明しましょう。
(3)親しい人に財産を贈与する
銀行口座の履歴や、名義変更の手続きなどから、贈与したことも発覚します。自己破産の前に無償で財産を処分する生前贈与を行うと、破産管財人により否認権が行使される可能性があります。また、免責が認められなくなる恐れがあります。
もっとも、状況によっては生前贈与が認められる可能性があるので、贈与をする前に、債務整理の経験が豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。
隠し財産がバレたらどうなるのか?
隠し財産が発覚した場合、免責不許可事由にあたり、免責が受けられなくなってしまいます。さらに、詐欺破産罪と言う犯罪に問われる可能性があります。
免責不許可事由があっても、裁判官の裁量により、「裁量免責」が認められることがあります。現実には、ギャンブルや浪費によって借金を作った場合でも、裁量免責により多くの場合、免責されています。
もっとも、裁量免責が認められるのは、裁判所が詳しく事情を調査したうえで、「この人ならば、同じ過ちを繰り返さずに生活を立て直せる」と判断した場合に限られます。裁量免責が認められるためには、弁護士に手続きを依頼した後は浪費行為をせず、財産や債権の申告なども正直に、包みかくさずに行うことが重要です。
自己破産の手続き中も無駄遣いをしてしまったり、財産を隠して裁判所をだまそうとしたりすると、「反省をしていない」「自分に有利な事だけ話して不誠実な対応である」と免責不許可になる可能性が非常に高くなります。
免責が不許可になると、財産は破産手続きにより処分される上、借金は全額そのまま残ることになり、非常に苦しい立場に追い込まれます。
さらに、悪質な財産隠しが発覚した場合は、破産法265条の詐欺破産罪に問われる可能性があります。
詐欺破産罪とは、破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次のいずれかに該当する行為をした場合に成立します。
・債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
・債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
・債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
・債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
詐欺破産罪で有罪となった場合、10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又は両方が科されることもあります。
元々ある借金が残るうえ、罰金も支払わなくてはならないので、非常に重いペナルティと言えます。また、財産隠しだとわかっていて協力した者も詐欺破産罪に問われる可能性があります。
財産隠しは基本的に不可能
裁判所や破産管財人は、財産隠しの手口について熟知しているので、素人がごまかそうとしてもまずバレます。また、万が一財産隠しが発覚した場合、免責が受けられなくなり、最悪の場合詐欺破産罪に問われます。リスクが高すぎるので、全ての財産をきちんと正直に申告して、借金をなくすことを第一に考えましょう。
理由があって、どうしても残したい財産がある場合、事前に弁護士に相談しましょう。生活に必要不可欠な財産であれば、「自由財産の拡張」と言って、まとまった価値のある財産でも手元に残せる場合もあります。
また、自己破産ではなく個人再生の手続きを取れば、生活に必要不可欠な財産でなくても手元に残せます。個人再生は、借金総額を5分の1~10分の1に大幅に減額できる手続きです。自己破産のように借金がゼロにはなりませんが、財産を処分する手続きはありません。
残したい財産が多い場合は、個人再生が可能かどうか、弁護士と検討されることをお勧めします。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑



