弁護士費用の種類と依頼時に確認すべきポイント
弁護士費用は、一般的には「相談料」「着手金」「報酬金(成功報酬)」「実費」の4種類の費用が発生します。それぞれの項目の概要や注意点、費用が発生するタイミングについて解説します。タイムチャージ制や手数料などの報酬体系、弁護士に依頼する前に確認すべきポイント、よくある質問についてもまとめました。
弁護士費用とは

弁護士費用とは、弁護士に法律トラブルを相談したり、正式に契約を結んで解決を依頼したりした際に支払う費用のことで、各法律事務所の報酬体系によって異なります。
もっとも、基本的な枠組みは多くの法律事務所で共通しており、個人の依頼者に対しては、「相談料」「着手金」「報酬金(成功報酬)」「実費」の4種類の費用が発生することが一般的です。
かつて、弁護士費用は日本弁護士連合会が定めた統一の報酬基準が存在しましたが、現在は自由化されています。とはいえ、旧報酬基準を参考にして報酬基準を定めている事務所も少なくないため、相場の目安になっています。
また、日弁連の会規である「弁護士の報酬に関する規程」によれば、弁護士報酬は基準を作成して事務所に据え置き、依頼者から申し出があれば報酬見積書を作成して交付しなければなりません。また、弁護士が事件を受任した際は、報酬について説明義務があります。
ただし、成功の程度などの不確定要素もあるため、弁護士費用全額の確定的な見積もりは原則として出ません。概算および費用の上限は出すことが可能です。
弁護士報酬について不明瞭な点があれば事前に弁護士に問い合わせ、確認の上、納得して契約を行うようにしましょう。
弁護士費用の各項目と特徴
個人が一般的な民事事件を弁護士に依頼する際、よく登場する4つの費用について説明します。
(1)相談料
最初に弁護士に会って法律相談をする際にかかる費用です。一般的には、相談時間30分ごとの定額制が多く、5,000円~1万円(税抜)程度かかります。
法律事務所によっては、初回の法律相談を無料としているところもあります。もっとも、「初回のみ無料」であったり、「債務整理は無料だが他の民事事件は有料」であったりするなど、法律事務所によってルールが違いますので、事前に確認しておいた方が良いでしょう。
(2)着手金
正式に契約を結んだ際に、弁護士に支払う費用です。事件が成功した際依頼者が得られるであろう経済的利益の8~10%程度が目安とされています。
例えば、請求額が慰謝料200万円なら、着手金は16万円~20万円となります。
着手金は、弁護士が事件を受任した時点で発生するため、結果に関係なく支払わなくてはなりません。また、事件が途中で終了しても、着手金は原則として返金されません。
(3)報酬金(成功報酬)
事件が成功した場合や、依頼者に有利に解決した際に、弁護士に支払う報酬です。依頼者が実際に得られた経済的利益の8~16%程度が目安になります。
例えば、500万円の債権を回収できた場合は、40~80万円程度の報酬金が発生します。
訴訟に勝つことが代表的な「成功」ですが、借金の減額に成功した場合や、依頼者の希望に近い形で和解が成立した場合なども含まれます。
(4)実費
事件の処理にあたって、裁判所への提出書類の郵便代や交通費など、弁護士が実際に支出した費用を請求します。
実費の例としては、以下のような費用が発生します。
・裁判所への納付金
・遠方への交通費
・裁判所や相手方への書類送付のための郵便代
・戸籍や登記簿などの書類の取得費用
・鑑定費用
実費がいくらかかるかは事案により大きく異なります。数千円程度で済むケースもあれば、建物明け渡しの強制執行の事案で、残された物品の量が多い場合は100万円以上かかる場合もあります。
実費がどの程度発生するかは、事件の内容によってある程度見通しが立つので、事前に弁護士に尋ねると良いでしょう。
その他の報酬体系について
多くの場合、弁護士費用は、「相談料」「着手金」「報酬金(成功報酬)」「実費」の4つの費用が発生しますが、それ以外のルールで報酬が定められることがあります。
(1)タイムチャージ
着手金や報酬金などの代わりに、弁護士がその案件に費やした委任事務処理の時間に基づいて費用を算出する方式です(移動時間を含む)。弁護士の時間単価に実際の作業時間を乗じて計算します。タイムチャージのみを支払うケースもありますが、タイムチャージに加えて成功報酬を加算する場合もあります。
(2)手数料
手数料は、遺言書や契約書の作成、示談交渉を要しない和解書の作成など、作業が主たる内容である委託事務処理の対価です。
(3)日当
日当は、弁護士や法律事務所の職員が事件のために事務所を離れて一定時間拘束される場合、着手金や手数料等とは別に支払います。遠方の相手方との交渉や、遠くの裁判所に出張する場合が典型例です。
(4)預り金
事件を受任する際、着手金と合わせて「預り金」を受け取るケースがあります。これは、裁判所や専門家などに支払うことになる実費をあらかじめ一定額お預かりしておくものです。
裁判所への納付金のように、実費を支出することが確実な事件においては、依頼者と協議の上、「預り金」として事件を受任した際に前もって受け取ることがあります。預り金は必要に応じて支出し、事件終了時に残額があれば、弁護士費用と清算します。
例えば、預り金として5万円を受け取っており、実際に支出した実費が3万円だった場合、本来ならば2万円を依頼者にお返しすることになります。しかし、報酬金が30万円発生している場合は、預り金残額2万円と報酬金30万円を相殺し、28万円を請求することになります。
(5)顧問料
顧問契約とは、企業や個人事業主が、法律トラブルに備えて弁護士と月額制で継続的な契約を結ぶことです。例えば、以下のようなケースで、弁護士に優先的にサポートが受けられます。
・契約書のチェックや修正
・雇用している労働者と法的問題が起こった場合の対応
・事業に関し、得意先や近隣住民等と法的トラブルが起きた場合の対応
・訴訟が発生した際の対応
月額で定められた範囲の業務について、深夜や休日であっても優先的に対応が受けられます。
弁護士に依頼する前に確認すべきポイント
弁護士に依頼する際は、契約する前に以下の点を確認しておくと良いでしょう。
(1)費用の概算と内訳について
弁護士費用は、「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」と言った項目に分かれています。事前に弁護士にいくらかかかるかを聞きましょう。
弁護士費用は、依頼時点で確実に発生する費用と、依頼時点では金額が不確実な費用に分かれます。
【確実に発生する費用】
・相談料
・着手金
【金額が不確実な費用】
・報酬金(成功報酬)
・実費
相談料と着手金については正確な金額が提示されるはずですし、報酬金(成功報酬)と実費についても見通しを聞くことが可能です。
(2)成功報酬について
成功報酬については、具体的な計算方法や、「成功」とはどのような状態なのかを確認しておくと良いでしょう。
例えば、訴訟の場合は、勝訴ではなく和解が成立した場合や、一部請求が認められた場合はどうなのか、弁護士によっても考え方が違うので、あらかじめ聞いておくと安心です。
また、成果が得られなかった場合は、成功報酬はゼロになるのか、減額されるが報酬金は発生するのか、と言った点も聞いておくと良いでしょう。
詳しく弁護士に尋ねることで、弁護士にも依頼者の本気度が伝わり、より丁寧な態度や詳細な説明につながることが期待できます。
(3)支払い方法の確認(分割払いの可否)
「お金に困っているけれど弁護士に依頼したいことがある」「費用が高いと困る」と言った場合、法律事務所によっては分割払いなど、柔軟な対応が可能なケースがあります。事前に支払い方法について確認しておくと良いでしょう。
特に債務整理の場合は、お金に困っている人が多いので、支払い方法の相談に応じる法律事務所も多いのが特徴です。もっとも、労働事件や離婚事件など、債務整理以外の事案でも柔軟な対応が可能な場合もあるので、まずは気軽に相談してみましよう。
(4)委任契約書の内容
正式に契約を委任すると、弁護士が「委任契約書」を作成して署名捺印し、弁護士と依頼者が各1部ずつ所有します。契約書には、費用や報酬、業務範囲などが記載されています。
「弁護士の作った書面だから、安心だろう」とよく見ずに受け取るのではなく、しっかり目を通し、疑問点や不明点は確認しましょう。
(5)途中で終了した場合の取り扱い
依頼後、事情が変わって依頼を途中で打ち切りたくなった場合や、弁護士を変えたくなった場合など、解約条件や違約金の有無なども契約書に書かれているかを確認しておきましょう。
弁護士費用に関するよくある質問
弁護士費用について、よくある質問をまとめました。
(1)無料相談って本当に全て無料なんですか?
多くのケースでは、「30分のみ無料」「最初の1回のみ無料」など、時間や回数が限定されています。最初の問い合わせの際に、無料の範囲や、無料範囲では相談が終わらず、有料となった場合の料金を確認しておきましょう。
(2)事件が長くなった場合、着手金のほかに追加料金は発生しますか?
事件の長期化により追加料金が発生するかどうかは、個々の事務所の方針によります。事件解決まで長くかかりそうな場合は、追加料金の有無について弁護士に聞いておくと良いでしょう。
追加料金を取らない法律事務所でも、事件が長期化した際は実費が増えることや、手数料を取るタイプの事件の場合は手数料が多くなることが考えられます。
(3)事件が終わった時に支払う報酬金から、着手金は差し引かれますか?
着手金は、弁護士が正式に依頼を受任したことに対し発生する料金であり、成功報酬の前払い金ではありません。従って、着手金とは別個に成功報酬をお支払いいただくことになります。
(4)事件が途中で終了した場合、着手金は返金されますか?
原則として着手金は返金されません。着手金は、弁護士が正式に事件を受任したこと自体に対して発生するため、途中で手続きが終了しても、返還されません。
ただし、弁護士が全く動いていない初期の段階で想定外の事情により終了したなど、事件の性質や終了の仕方によっては、法律事務所の判断で一部返金が行われるケースがあります。
(5)裁判に勝ったら相手方がこちらの裁判費用を支払ってくれるというのは本当ですか?弁護士費用も相手が支払ってくれますか?
日本では、裁判に勝つと、裁判所に納める印紙代や郵便切手代などの裁判費用については、全額もしくは一部を支払ってもらうことができます。しかし、弁護士費用については、原則としてそれぞれが負担する制度になっています。
例外的に、不法行為に基づく損害賠償請求に関しては、加害者側が被害者側の弁護士費用の一部を負担するケースがあります。ただし、この場合でも、弁護士費用全額ではなく、裁判所が認めた金額のみが対象となる点には注意してください。
例えば、交通事故や医療事故、SNSでの誹謗中傷といったケースでは、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことがあります。これに勝訴した場合、裁判所は認容した慰謝料額の1割程度を弁護士費用として認める場合があります。
(6)弁護士費用を安く抑える方法はありますか?
基本的には、法律トラブルは病気と同じで、放置するほど悪化する傾向があります。問題が小さいうちに、早めに弁護士に相談すれば、もめごとが大きくなった後に比べてコストを抑えて解決できるでしょう。早めに、無料相談などを利用して弁護士に話してみましょう。
弁護士費用の4つの項目を理解する
「相談料」「着手金」「報酬金(成功報酬)」「実費」の4種類の費用は、それぞれ別個に発生します。相談料を無料としている法律事務所も、多くのケースでは無料の範囲が限定されているので、事前に確認しておきましょう。また、着手金は報酬金とは別に発生する料金で、報酬金の前払いではないことに注意してください。
相談料と着手金は初期の段階で金額が確定しています。報酬金と実費については不確実な部分がありますが、おおよその見通しを立てることは可能ですので、弁護士に弁護士費用総額の見積もりを出してもらうと安心です。
事件が長期化しそうな場合は、弁護士に追加料金の有無について確認をしたほうが良いでしょう。
弁護士の大切な資質に、「わかりやすく説明する」ということがあります。弁護士費用に関し疑問や不明点があれば積極的に質問してみましょう。明瞭で親切な返答があれば、信頼できる弁護士だと判断する材料の一つになります。逆に、説明が分かり辛い場合や、不明点や疑問点が解消されないままの場合、弁護士としての能力に疑問が残ります。
コミュニケーションがきちんととれる、相談しやすい弁護士に依頼して、法律問題の解決を目指しましょう。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑


