過払い金の引き直し計算は自分でできるのか
過払い金の引き直し計算についてわかりやすく解説します。引き直し計算とは、過去にした借金の取引履歴をもとに、利息制限法の上限金利に基づいて計算し直し、過払い金の有無及び金額を算定することです。引き直し計算は自分でもできますが、正確な金額を出すためには専門家に依頼する必要があります。引き直し計算に必要な情報、ネット上の過払い金計算シミュレーターを利用する際の注意点についてもまとめました。
目次
引き直し計算とは

引き直し計算とは、過去の借金の取引履歴をもとに、利息制限法の上限金利に基づいて合法的な金利を計算し直し、払いすぎた利息の有無及び金額を算出することです。
過払い金とは、過去に借金を返済した際、利息制限法の上限金利よりも多く払い過ぎていたお金のことを言います。過払い金がある場合、相手方の業者に請求できます。
一時期、テレビCMなどの広告で過払い金返還請求のことが頻繁に流れていたので、過払い金についてはご存じの方も多いでしょう。過払い金がいくらあるかを算定する計算のことを引き直し計算と言います。
過払い金については、ネットにツールが出回っているので、取引履歴を取り寄せれば自分で引き直し計算をすることは可能です。しかし、過払い金の計算は複雑なので、正確な金額を知るためには、専門家に依頼されることをお勧めします。
グレーゾーン金利と引き直し計算の仕組み
かつては、グレーゾーン金利によって多くの貸金業者がお金を貸し付けていました。グレーゾーン金利で貸し出されて現実に返済した金額のうち、利息制限法よりも払い過ぎていた利息分を計算するのが引き直し計算です。
【グレーゾーン金利とは】
グレーゾーン金利とは、2010年6月以前に存在した、「利息制限法の上限金利を超えていて、出資法の上限金利は超えていない金利」のことです。
借金の金利を制限する法律は「利息制限法」と「出資法」の2種類があり、かつては、それぞれ別の上限金利が設定されていました。
(1)利息制限法
貸付金額が10万円未満…20%以下
10万円以上100万円未満…18%以下
100万円以上…15%以下
(2)出資法
貸付金額にかかわらず、29.2%以下
利息制限法には違反しても刑事罰が無く、他方、出資法には刑事罰がありました。そのため、多くの消費者金融やカード会社などが、利息制限法を超える違法な金利であるものの、出資法には違反しない金利で貸し付けを行っていました。これをグレーゾーン金利と言います。
2010年6月に法律が改正され、グレーゾーン金利はなくなりました。従って、2010年6月以前に借金を返済したことがある方は、過払い金が発生している可能性があります。
もっとも、2007年前後から金利を引き下げた企業も多いため、2010年6月以前の借り入れでも、過払い金が発生していないケースもあります。
借入時の契約書が残っている場合は、最初にチェックして、金利について確認したほうが良いでしょう。
【引き直し計算の方法】
引き直し計算をするためには、まず、取引のあった企業から取引履歴を取り寄せなくてはなりません。
その後、借金を利息制限法による法定金利で返済していたと仮定して、合法的な利息の総額を計算し直します。そして、実際に返済した利息の総額と、法定金利で返済した場合の利息の総額の差額分を算出します。すると、過払い金の額が出てきます。
引き直し計算は自分でできるのか
引き直し計算を自分で行うことは可能ですが、目安として算出するにとどめ、正確な計算は専門家に依頼することをお勧めします。
引き直し計算の元となる取引履歴の取り寄せは本人でも可能です。また、引き直し計算を行うためのエクセルを使ったツールも出回っており、誰でも無料でダウンロードして使うことができます。
しかし、引き直し計算を正確に行うためには法律的な知識が必要です。特に、以下の場合は、専門家に依頼しないと正確な金額を算出することが難しいです。
・同じ企業から、何度も借金と返済を繰り返している
・途中で一括返済して完済した
・相手の企業に取引履歴が残っていない
・(クレジットカードの場合)ショッピング残との相殺がある
上記に当てはまらなくても、ご自身で計算してみて、「結構過払い金がありそう」となったら、過払い金請求の実績がある専門家に依頼して正確な額を算出し、実際に請求するのが確実な方法といえます。
引き直し計算をするために準備する情報
引き直し計算をするためには、過去に借金をした企業から取引履歴を取り寄せる必要があります。
【取引履歴の入手方法】
取引履歴は、貸金業者等に問い合わせれば開示してくれます。開示方法は相手方企業によって異なり、窓口ですぐに交付してくれる企業もあれば、FAXや郵送による企業もあります。
利用目的を聞かれた場合は、「過去の取引内容を確認したいから」などと答え、過払い金請求を考えていることは言わないほうが良いでしょう。交渉時に不利に働くケースがあります。
開示にかかる期間は、1週間から10日ほどというケースが多いですが、中には1か月以上かかる場合があります。
過払い金は、最後の取引日から10年で時効にかかります。時効が迫っていると、あえて開示を遅らせる場合もあります。
専門家に依頼すれば、取引履歴の取り寄せを行ってくれます。また、本人が請求するよりも早く開示される可能性がありますので、時効が迫っている場合は専門家に依頼しましょう。
【引き直し計算ができるソフトに入力する情報】
過払い金の引き直し計算ができるソフトは、無料で出回っています。「名古屋消費者信用問題研究会(https://kabarai.net/howtouse/)」の利息計算ソフトが有名です。
取引履歴から、以下の情報をソフトに従って入力すると、過払い金の額を算出できます。
・借入を行った年月日
・借入金額
・弁済額
・利率
・借り入れ日数
・利息
・未払利息
ネット上の過払い金計算シミュレーターには要注意
インターネット上には、「過払い金シミュレーター」「過払い金計算機」等と称した、いくつかの項目を埋めるだけで過払い金を計算してくれるサービスも見られます。しかし、こうした過払い金の簡易計算サービスでは正確な過払い金の額が算出できないことがあり、また悪質な業者である可能性もありますので、注意してください。
(1)正確な金額が算出できないことがある
ネット上の過払い金の簡易計算サービスでは、借入総額や借入期間などの少ない情報を入れるだけで過払い金の計算が可能となっています。簡単に計算できるところが魅力ですが、正確な金額を算出するためには、前述した通り、多くの情報が必要です。
これらの情報の入力を省いたサービスでは、実際の過払い金の額とかけ離れた額が出ることも珍しくはありません。また、銀行や信用金庫等は以前から利息制限法の範囲内でお金を貸していましたが、そうした事情も考慮されていません。
(2)悪質業者が運営するサイトの可能性
過払い金の簡易計算サービスは、弁護士事務所や司法書士事務所が運営しているケースが多いのですが、中には運営実態がよくわからないサイトも存在します。
悪質な業者の場合、簡易計算サービスで過払い金返還に興味のある客を集め、弁護士資格のない人に法律業務をさせているケースもあります。これは非弁行為と言って、違法です。
ネット上の過払い金の簡易計算サービスには、上記のようなリスクがあることに十分注意してください。
引き直し計算を自分で行うのと専門家に依頼することの違い
引き直し計算は自分でも行うことができますが、正確な金額でなくとも気が付かないといった欠点があります。専門家に相談すれば正確な金額が出ますが、依頼先によってはお金がかかる点には注意が必要です。
【自分で計算する場合】
(1)メリット
・お金がかからず、気楽に計算できる
・過払い金の有無や大まかな金額が分かってから専門家に相談できる
(2)デメリット
・計算ミスに気が付かない
・複雑な事案の場合、法律家の専門的判断が必要になるが、対応できない
・取引履歴の開示が遅くなるケースがある
【専門家に依頼する場合】
(1)メリット
・手間がかからない
・専門家によっては無料で引き直し計算をしてくれるところもある
・正確な金額が出る
・取引履歴の開示がスムーズ
(2)デメリット
・専門家によってはお金がかかる
・どこに依頼すればよいか選ぶ手間がある
引き直し計算を専門家に依頼すべきケースとは
基本的に、過払い金請求を真剣に考えている場合は、専門家に依頼したほうが良いでしょう。特に、以下のケースに当てはまる場合、専門家への依頼を強くお勧めします。
・同じ会社と複数回取引があるケースなど、複雑な場合
・過払い金額が高額である場合
・時効が迫っている場合
・相手の企業に取引履歴が残っていない場合
(1)同じ会社と複数回取引があるケースなど、複雑な場合
過払い金は、最後に取引した日から10年経つと時効にかかります。しかし、同じ業者から何度も借り入れと返済を繰り返していると、10年以上前に完済した借金でも請求が可能なケースがあります。
この場合、相手方も時効について裁判で争ってくるため、専門家の知識と助言が欠かせません。
また、途中で完済した場合や、返済が遅れた場合なども、ソフトを使って単純に計算できないので、専門家に依頼しましょう。
(2)過払い金額が高額である場合
基本的に、過払い金の額が高額であるほど、正確な金額をきっちり計算して相手方に請求する必要があります。金額が不正確だと、それを理由に相手方が過払い金返還を拒むことがあるのです。また、計算ミスで過少請求をした場合に、発生する損も大きくなります。
(3)時効が迫っている場合
時効が迫っていると、相手方企業に取引履歴の開示を求めた際、開示を遅らせることがあります。専門家に依頼すると、個人で請求するよりもスピーディーに開示されますので、時効が近い場合は専門家に頼みましょう。
(4) 相手の企業に取引履歴が残っていない場合
企業の中には、一定期間を過ぎた取引履歴を処分しているケースがあります。この場合も、「推定計算」と言う方法で過払い金の額を計算できる可能性があります。
しかし、推定計算は非常に難しいので、専門家に依頼されることを強くお勧めします。
過払い金請求にデメリットはあるのか
基本的に、過払い金請求にデメリットは少ないのですが、以下の点には注意が必要です。
・過払い金請求をした企業に現在も借金があると、ブラックリスト入りする可能性がある
・過払い金請求をした企業からお金は借りられなくなる
・過払い金が少額の場合は割が悪い
(1)過払い金請求をした企業に現在も借金があると、ブラックリスト入りする可能性がある
基本的に、過払い金請求をしても、信用情報機関の記録がブラックリスト入りすることはありません。過払い金請求は正当な権利です。借金の滞納や、借金を減免する制度を利用したわけではないので、信用情報にマイナスにはならないのです。
また、例えば100万円の過払い金があって、当該企業に40万円の借金が現在もある場合、過払い金から現在の借金額を差し引いた60万円を請求できます。この場合も、ブラックリスト入りはしません。
しかし、例えば100万円の過払い金があって、当該企業に300万円の借金が現在も残っていると、借金は過払い金を差し引いても200万円残ります。このように、過払い金の額よりも借金額の方が多いケースでは、「借金を減らす措置を行った」と解釈され、ブラックリスト入りすることがあります。
ブラックリスト入りすると一定期間(5年程度)、新たな借金やクレジットカードの利用が難しくなります。過払い金請求をした企業以外からも借り入れなどが難しくなるので、注意してください。
(2)過払い金請求をした企業からお金は借りられなくなる
ブラックリスト入りしないケースでも、過払い金請求をした企業とは、取引を続けられなくなる場合があることに注意してください。企業内の顧客情報には「過払い金請求をしたブラックな顧客」と言う記録がずっと残ることがあるからです。
特に、クレジットカード会社で、公共料金などをそのカードから支払っている場合は、過払い金請求の前に支払い方法を変更するなどの措置が必要になります。
(3)過払い金が少額の場合は割が悪い
過払い金の額が数万円など少額の場合は、手間をかけて請求を行うのが面倒に感じるかもしれません。特に、専門家に相談するとお金をとられるので、受け取れる過払い金の金額がさらに少なくなります。
過払い金が少ない場合は、自分で請求してみるか、あるいはそこまで気にすることかどうか、ご自身で判断することになるでしょう。
正確な引き直し計算のためには専門家の協力が必要
引き直し計算は、取引履歴を取り寄せ、エクセルが入ったパソコンを使うことで、誰でも行うことができます。しかし、自分で計算してみた場合でも、過払い金があることが分かり、請求を考えている場合は、専門家に正確な引き直し計算を依頼しましょう。
引き直し計算を依頼する場合は、後程過払い金請求を行う前提で、過払い金請求の実績のある専門家に相談しましょう。
引き直し計算や過払い金請求を依頼できる専門家としては、弁護士と司法書士がいます。
司法書士は、過払い金が140万円を超える場合は、相手方との交渉や、裁判の代理人を務めることが禁じられています。140万円を超える過払い金がある場合、司法書士に依頼すると調査だけで終了し、改めて弁護士を探す必要があります。
高額の過払い金がありそうな場合や、相手方企業と裁判になることが想定されるケースでは、当初から弁護士に依頼されることをお勧めします。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑



