個人再生すると官報に載る?個人情報の検索は可能?
個人再生すると官報に住所や氏名が3回掲載されます。掲載期間は90日間限定で、名前で検索されないよう配慮されています。官報は一部の職業の人を除いてほとんどの人が読まないので、官報から個人再生したことがバレる可能性は低いでしょう。官報に掲載されるタイミングや閲覧方法、デメリット、官報に掲載されず個人再生する方法はあるのかなど、個人情報の官報掲載に関する疑問点をまとめました。
目次
個人再生を申し立てると官報に掲載される

個人再生を申立てると、国が発行する「官報」に個人再生をする人(再生債務者)の氏名や住所が掲載されます。制度上、個人再生をすると必ず官報に掲載される決まりになっています。
【官報の概要と個人情報の掲載期間】
官報とは、法令や公示事項を掲載し、国民に周知する国の広報です。かつては紙で発行されていましたが、令和7年(2025年)4月1日より電子化されました。
官報は、内閣府の官報発行サイトに掲載されることで発行されます。発行から原則90日間は、誰でも官報を閲覧したりダウンロードしたりできます。90日を過ぎると、プライバシーへの配慮から、再生債務者の個人情報は閲覧・ダウンロードできなくなります。
【なぜ、官報に個人情報が載るのか?】
なぜ、一定期間再生債務者の個人情報が官報に掲載されるのかというと、再生債務者にお金を貸している債権者に、個人再生手続の開始を周知し、手続きに参加する機会を与える意味があります。
個人再生申立の際、再生債務者は「債権者一覧表」を裁判所に提出します。これには、お金を借りた相手の名前や連絡先、借金の内容が記載されています。裁判所は、債権者一覧表に記載された債権者には個別に通知を出して、再生手続きが行われることを知らせます。
しかし、債権者が多い場合など、債権者一覧表に記載漏れがある場合がありえます。債権者一覧表に載っていなかった債権者は、手続きが行われること自体を知らないので、参加できなくなってしまいます。
債権者は、個人再生手続に参加すると、貸したお金の一部が返ってくる可能性があります。しかし、手続きに参加しないと、借金が全く取り戻せないおそれがあります。
こうした事態を防ぐために、債権者は官報を定期的にチェックしていれば、自分がお金を貸した人が個人再生することを知ることができる仕組みになっているのです。
【個人再生の情報が官報に載る時期と回数】
個人再生の際は以下の3回のタイミングで個人情報が掲載されます。
(1)再生手続開始決定が出た際
裁判所が申立書類等を審査後、個人再生手続を開始することを決定した際に、一回目の官報公告が掲載されます。
(2)再生計画案を決議に付する旨を決定した際
2回目の官報公告は、小規模個人再生を選択するか、給与所得者等再生を選択するかで異なってきます。
①小規模個人再生を選択した場合
再生債務者は、減額後の借金額や返済スケジュールを定めた再生計画案を裁判所に提出します。裁判所がこれを審査した後、債権者の書面決議に付します。この決議を行うことが決定した際に、再び官報に掲載されます。決議で、不同意を表明した債権者が過半数に達しなければ、再生計画案は可決されます。
②給与所得者等再生を選択した場合
給与所得者等再生の場合、債権者の決議は行われません。その代わり、再生債務者が再生計画案を提出すると、債権者に対する意見聴取が行われます。裁判所が意見聴取を行うことを決定した際に、再び官報に掲載されます。
(3)再生計画案認可を決定した際
債権者の決議が可決されると、裁判所が審査の上、再生計画認可の決定を出します。このタイミングで3回目の官報掲載が行われます。
個人再生の事実が官報に掲載されてバレるのか?
官報は日本国民に対する広報ですが、実際に官報を一度でも読んだことがある日本人は少数派です。仕事でもなく日常的に官報を読む人はほとんどいません。そのため、勤め先や友人に知られる可能性は非常に低いと言えます。
ただし、金融機関や貸金業者、不動産業者、一部の公務員など、一部の職種では官報を定期的にチェックしているケースがあります。そうした職種の人が身近にいる場合は、官報掲載をきっかけに個人再生がバレる可能性もあります。
官報の閲覧方法とは
官報は令和7年(2025年)4月1日より電子化されたため、内閣府の官報のウェブサイトで閲覧することが基本になります。その他にも、紙の官報を購入したり、図書館で閲覧したりすることも可能です。
(1)インターネット版官報
インターネット版の官報は、内閣府のウェブサイトで誰でも無料で90日間閲覧することができます。90日を過ぎると個人再生等の個人情報は閲覧不可能になりますが、それ以外の記事は90日間を過ぎても「過去の官報」のページで閲覧できます。
また、国立印刷局提供の有料の官報情報検索サービスを使うことで、昭和22年5月3日の日本国憲法施行日以降の官報を全て検索することができます。ただし、個人情報を検索することはできません。利用料金は月額2,200円(申込月は無料)です。
(2)紙の官報
紙の官報は、全都道府県にある「官報サービスセンター」で購入することができます。交付手数料は一部あたり140円となっています。
また、全官報(全国官報販売協同組合)のウェブサイトで、紙の官報の定期送付を申し込むことができます。
(3)図書館で閲覧する
図書館によっては、紙の官報が所蔵されている場合や、インターネット版官報を閲覧できる場合があります。最寄りの図書館で官報について問い合わせてみましょう。
インターネットで名前検索されることで官報掲載が分かるのか
官報に掲載された個人情報は、Googleなどの検索エンジンで検索できないように工夫されています。国立印刷局提供の有料の検索サービスでも個人情報を検索することはできません。
これに加え、官報掲載後90日を過ぎた個人情報は、閲覧不可能になります。従って、よっぽど運が悪くない限りは、インターネット版官報から個人再生の事実が周囲の人にバレることはないでしょう。
【破産者マップとは】
かつては、「破産者マップ」と言って、官報に記載された個人情報をGoogleマップ上に表示するサイトが存在しました。破産者マップで興味のある地域を表示させれば、その地域で自己破産や個人再生をした人の情報が地図に表示される仕組みです。
しかし、官報の破産者情報はあくまで債権者に手続き参加の機会を与えるためであって、悪意もしくは面白半分に近所の人の自己破産や個人再生の過去を知るためではありません。破産者マップは、プライバシー権の侵害や名誉棄損に当たるという批判を受けて閉鎖されました。その後も類似サイトが登場しましたが、違法なサイトとして検索しても表示されないようになっています。
また、官報の個人情報が悪用されないよう、電子化に伴って個人情報保護の仕組みが強化されています。
個人再生が官報に掲載されるデメリット
個人再生が官報に掲載される現実的なデメリットとしては、費用がかかること、ヤミ金からのDMや勧誘が来る可能性があることです。それ以外にも、周囲にバレる可能性がゼロではないこと、ブラックリスト入りすることが挙げられます。
(1) 官報公告費用がかかる
個人再生をする際は、官報に公告を掲載する費用を申立人が支払う必要があります。金額は約1万2,000~1万4,000円程度で、裁判所に予納金として支払います。官報掲載は手続き上義務付けられているので、拒否することはできません。
(2) 闇金業者からDMや勧誘が来る
官報の情報を頼りに闇金業者からのDMや借金の勧誘が来る可能性がありますが、絶対に誘いに乗らないようにしましょう。
法令を守らずに違法にお金を貸している業者のことを闇金と言います。個人再生をすると、一定期間普通の企業からお金が借りられなくなることから、闇金の誘いに乗りやすいと考えて、DMなどを送ってきます。
闇金を利用すると、法外な高金利の要求や暴力的な取り立てなどのほかにも、犯罪行為に加担させられるなど、深刻なトラブルに発展する危険性が高いです。闇金の誘いには乗らないで下さい。
(3) 周囲にバレる可能性がゼロではない
通常、官報に掲載されたことによって周囲の人にバレることはまずありませんが、たまたま官報を見て知ってしまう可能性はあります。
【周囲にバレるパターン①親しい人が金融機関等に勤めていた】
知り合いの誰かが金融機関等に勤めていて、官報をチェックする仕事を担当している場合があります。このような仕事には守秘義務があり、個人再生の事実をたやすく言いふらすと信用にもかかわるので、噂が広まる可能性は低いでしょう。しかし、家族など特に親しい人の場合は「お前個人再生したの?」と聞かれる可能性はあります。
【周囲にバレるパターン②他の記事を読んだついで】
例えば、官報には一定の国家試験の資格試験の合格者や、勲章・褒章に関する記事も載ります。「友人が司法試験に合格したから」「親戚が紫綬褒章を受章したから」と言った理由で官報をチェックし、興味本位で他の記事も読んでいたら、知っている人が個人再生したことが書かれていた、といったパターンです。
いずれにせよ、ものすごく運が悪い状況ですが、全くありえないとは言い切れません。
(4) ブラックリスト入りする
個人再生の事実が官報に掲載されると、信用情報機関に5~7年程度、個人再生したことが記録されます。この間は新たな借金やクレジットカードの作成・利用が難しくなります。
信用情報機関とは、個人のお金の貸し借りなどの履歴を一定期間記録し、保管する企業の事です。金融機関や貸金業者、カード会社などは、信用情報機関の記録を参照してお金を融資したり、クレジットカード作成や更新の際の審査を行ったりします。
個人再生をすると、信用情報機関に個人再生をしたという記録が5~7年程度記録されるため、審査に通りにくくなります。その期間を俗にブラックリストと言います。
もっとも、通常は官報に掲載される前に、弁護士に正式に個人再生を依頼して各債権者に通知がされた時点でブラックリスト入りします。従って、このデメリットはあまり気にする必要はないでしょう。
官報に掲載されず個人再生する方法はあるのか?
官報掲載は個人再生に組み込まれた不可避な手続きであり、拒むことはできせん。どうしても官報に掲載されたくないのならば、「任意整理」をすることで、官報掲載を避けて借金負担を軽くすることはできます。
個人再生や自己破産は、裁判所を通す手続きですので、必ず官報に個人情報が掲載されます。これに対し、任意整理は、裁判所を通さずに債権者と話し合って借金負担を軽減する手続きですので、官報に掲載されません。
ただし、任意整理では大幅な借金減額はできません。通常は借金の元本は減額できず、将来支払うべき利息のカットや返済計画の見直しが話し合いの中心となります。任意整理ができる目安としては、借金の元本の残額が3~5年程度の分割払いで支払い切れることとされています。
借金が苦しく、元本まで大幅に減額されないと支払い切れないというケースでは、裁判所で個人再生を行うことになるでしょう。
幸い、官報に掲載されるデメリットは多くはないので、あまり心配せずに手続きを取ることをお勧めします。
個人再生を考えているなら弁護士に相談を
個人再生は、多くの書類作成や取り寄せがあり、減額後の返済計画を自分で考えて提出しなくてはなりません。煩雑で手間のかかる手続きのため、弁護士に依頼することを強くお勧めします。
個人再生は、制度上は本人のみでも可能な手続きですが、実際にはほとんどの人が弁護士などの専門家に依頼して行っています。手続きが煩雑なだけではなく、個人再生手続にあたって守るべきルールがあり、専門家のアドバイスや注意を聞きながら手続きをしたほうが安全だからです。
これに加え、弁護士に正式に個人再生を依頼すると、債権者からの督促や取り立てが止むというメリットもあります。弁護士は個人再生を受任すると「受任通知」という知らせを各債権者に送信します。これには個人再生手続を開始するという事実と、債務者と直接連絡を取ることを禁止する文言が記載されています。以降は、債権者とは弁護士を通して連絡をすることになります。
また、「親が官報を読む仕事をしていてどうしても掲載されたくない」等の希望がある場合は、法律事務所の無料相談を利用しましょう。任意整理で解決できるかどうか、アドバイスが得られます。
借金の問題は、「払いきれなくなった自分が悪い」と思い詰め、一人で苦しんでしまう人が少なくありません。しかし、そうした人のために生活を立て直すための法的な手段が用意されているのです。一人で抱え込まずに、まずは気楽に問い合わせされることをおすすめします。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑


