延滞利息とは?遅延損害金の意味や上限、計算方法について

借金返済が滞ると、遅れた日数分の「延滞利息(遅延損害金)」がかかってきます。
延滞利息が加算されると返済しなければならない金額が増えるので、返済がますます厳しくなってしまう方が少なくありません。

借金したときには、延滞利息をなるべく発生させないようにすべきといえるでしょう。

今回は延滞利息の意味や法律上の上限、計算方法などの知識を解説します。
延滞利息や遅延損害金が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

延滞利息(遅延損害金)とは?

そもそも借金の支払いが遅れたときに発生する「延滞利息」とはいったい何なのでしょうか?

延滞利息は金銭の支払いを遅延したときに発生する損害賠償金です。借金などの支払いをしなければならないにもかかわらず債務者が支払わないと、債権者には遅れた日数分の損害が発生すると考えられます。ただ損害額を個別に計算するのは手間ですし、支払いを遅延しているのが「金銭」であれば画一的な対応も可能です。

そこで金銭の支払いが遅れたときには、遅れた日数分の延滞利息が発生するものとされています。消費者金融やカード会社などから借り入れをしたとき、期日までに支払いができなければ延滞利息がかかってしまうので、そういったことのないように注意しましょう。

なお延滞利息を「遅延損害金」ともいいます。延滞利息と遅延損害金は同じものなので、これを機会に押さえておきましょう。

延滞利息は法律上当然に発生する

延滞利息は、法律上当然に発生します。当事者同士が取り決めなくても支払いが遅れると自然に延滞利息がかさんでいく、という意味です。
よって借金を返さなかったら、当初に延滞利息の約束をしていなくても遅れた日数分の延滞利息がかさみ、支払額がどんどん増えていきます。

延滞利息は約定で発生するのが一般的

延滞利息の法定利率は決まっており、2022年時点では年率3%とされています。
ただ現実に適用する延滞利息の利率は、法律の定める上限の範囲内であれば当事者間で自由に決められます。カードローンやクレジットカードなどの借り入れの場合には、年率20%に近い数字に設定されているケースが多数です。

たとえば延滞利息が年率20%の場合、100万円を1年遅延し続けると20万円の支払金が加算されてしまいます。軽く考えていると借金が雪だるま式に増えていくので、軽視してはなりません。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金(延滞利息)の具体的な計算方法をみてみましょう。

遅れている金額に「年率」を掛け算する

まずは返済が遅れている金額に延滞利息の年率を掛け算します。このときポイントとなるのが「返済が遅れている金額」を基準にする点です。必ずしも元本全体に遅延損害金年率を掛け算するとは限りません。

たとえば100万円借りていても10万円のみ遅延していたら、基準となるのは10万円です。
延滞利息の年率が15%なら、10万円×15%=15000円が1年分の遅延損害金の金額となります。

365日で割り算する

年率計算で算定されるのは1年分の遅延損害金なので、1日分の遅延損害金を算出するには365日(閏年の場合には366日)で割り算しなければなりません。
たとえば1年で15000円の遅延損害金が発生するケースの場合、1日あたりの延滞利息は41.09円です。

日数を掛け算する

1日あたりの延滞利息を計算できたら、遅れた日数を掛け算すると実際に支払うべき遅延損害金の金額を算定できます。
たとえば1日あたりの遅延損害金が50円の場合、100日延滞したら5000円となります。

利息と遅延損害金の違い

一般の利息と遅延損害金は以下のような点で異なります。

発生するタイミング

一般の利息は基本的に借金している間、完済時までかかり続けるものです。借金を延滞していなくても利息は発生します。

一方遅延損害金は借金を延滞したときに発生します。このように、通常利息と延滞利息とでは発生する時期やタイミングに違いがあります。

対象となる借金

一般の利息は「借りている金額全体」に対してかかってきます。たとえば100万円を借りていたら、100万円全体に利息が加算されます。
一方、遅延損害金の場合には「遅延している金額」にのみ加算されます。つまり長期延滞して期限の利益を喪失するまでは、一部の延滞部分についてのみ遅延損害金がかかるという意味です。

上限利率

利息と遅延損害金とでは上限利率も違います。
遅延損害金の場合、利息の1.46倍の数字にまで設定しても良いことになっています(ただし債権者が貸金業者の場合、上限は20%となります)。

通常利息と遅延損害金はどちらかしか発生しない

1つの借金について、通常利息と遅延損害金が2重にかかることはありません。借金返済を延滞して遅延損害金がかかる場合、通常利息はかからなくなります。

たとえば100万円を借りて10万円の支払いを延滞したとしましょう。この場合、10万円の部分には遅延損害金がかかるようになるので、通常利息はかからなくなります。残りの90万円についてはこれまでとおりに通常利息がかかります。

また借金を全部滞納した場合には、全部に対して遅延損害金がかかるようになるので通常利息は発生しなくなります。

遅延損害金についての計算方法は複雑で、自分ですると間違えてしまうおそれもあります。自信がなければ専門家によるアドバイスを受けましょう。

利息制限法とは

利息制限法は、借入金などにかかる利息の上限を定める法律です。
利息制限法を超過する利率を定めても必ずしも罰則はありませんが、支払いすぎた利息は無効になります。そこで、過去に利息制限法を超過して支払いをしていた人は、貸金業者へ「過払い金請求」もできます。

利息制限法が定める遅延損害金の上限利率

利息制限法では、通常の利息と延滞利息についての上限が定められています。

借入先が貸金業者の場合の通常利息と遅延損害金の上限は以下のとおりです。

  • 借入金額が10万円未満…通常利息の上限は20%、延滞利息の上限も20%
  • 借入金額が10万円~100万円未満…通常利息の上限は18%、延滞利息の上限は20%
  • 借入金額が100万円を以上…通常利息の上限は15%、延滞利息の上限は20%

遅延損害金を発生させない方法、払えないときの対処方法

借金しているときに遅延損害金が発生すると、借金返済額がどんどん膨らんでしまって不利益も大きくなります。
以下では遅延損害金を発生させない方法や発生したときの対処方法をお伝えします。

支払い期日に遅れないようにする

まずは支払い期日に遅れないようにきちんと管理するのが基本です。支払いさえしていれば、遅延損害金は発生しません。
借り入れや返済は計画的に行いましょう。

遅れたら期限の利益を喪失する前に弁済する

支払いが遅れてしまっても分割払いの場合、延滞利息はいきなり高額になりません。
遅れた部分についてのみかかるので、早めに未納金を弁済してしまいましょう。
いったん「期限の利益を喪失」してしまったら、残元本全体に遅延損害金がかかって金額がかさんでいきます。そうなる前に支払うのが遅延損害金を発生させないコツです。

任意整理などの債務整理を行う

どうしても延滞利息の支払いが厳しい場合、債務整理をしましょう。
たとえば任意整理をすると、借金の利息や遅延損害金をカットしてもらえます。
個人再生をすると利息や遅延損害金だけではなく元本まで減額してもらえますし、自己破産をしたら一切の支払いは不要となります。

ただし債務整理をスムーズに進めるには専門家によるサポートが必要です。自分で取り組むと失敗してしまうリスクも高まります。まずは一度、借金問題に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみてください。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑