再生計画とは 再生計画案の作成方法について
個人再生手続きのうち、再生計画について重点的にまとめました。再生計画案は、減額後の各債権者に対してどのように返済していくかを記したプランです。再生計画案は自分で作成して期限内に提出する必要があります。再生計画の提出から認可までの流れ、再生計画案の作成方法、可決されやすい再生計画案について概説します。
個人再生における再生計画とは?

再生計画とは、個人再生手続により減額された借金を、各債権者に対してどのように返済していくかを具体的に記した案のことです。再生計画案は、債権届出期間の満了後に、裁判所が定める期間内に、自分で作成して提出しなければなりません。
再生計画案は、再生手続で裁判所に提出する書類のうち最も重要なものです。再生計画案を裁判所に認可してもらわないと、借金が減額されません。
再生計画案は出せば認可されるわけではなく、裁判所による厳格な審査の対象になります。
個人再生で借金を減額したのに、再生計画通りに返済できなくなってしまうと、債権者に大変な迷惑がかかります。個人再生手続をとった段階で、債権者は借金の大幅な減額を覚悟させられるのに、その後に返済もされないとなると、更なる権利侵害となるからです。
そうした事態を防ぐため、「この人の資力で本当に再生計画が実行可能か」を裁判所が慎重にチェックします。
また、再生計画案には最低弁済額の計算など、様々な注意すべきポイントがあります。以下に具体的に解説していきますが、個人再生手続は専門家である弁護士に依頼し、確認・修正を繰り返しながら進めることをお勧めします。
再生計画の提出から認可までの流れ
再生計画を作成してから裁判所が認可する流れを大まかに説明します。
(1)再生計画の提出
裁判所が定める期間内に再生計画案を作成して提出します。期限に1日でも遅れると個人再生自体が廃止になってしまいます。余裕を持った作成と提出を心がけましょう。
(2)再生計画案の修正
裁判所が再生計画案を審査し、修正可能な問題が発見された場合は修正を命じます。再生債務者も、再生計画案の提出後に、裁判所の許可を得て再生計画案を修正できます。
(3)再生計画案を決議に付する旨の決定
小規模個人再生の場合、裁判所は再生債権者による再生計画案を決議に付する旨の決定を行います。これは、再生債権者に対し、再生計画に同意するかどうかを確認するプロセスです。実務上は書面による決議が行われます。
給与所得者等再生の場合は、債権者の書面決議はありません。
(4)再生計画案の認可・不認可
裁判所は、不認可事由がある場合を除き、再生計画の認可を決定します。
不認可事由とは以下の通りです。
・再生手続又は再生計画が法律の規定に反し、かつその不備を補正できないものであるとき(法律違反が軽微である場合は除く)
・再生計画が遂行される見込みがないとき
・再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき
・再生計画の決議が再生債権者一般の利益に反するとき
これに加え、小規模個人再生の場合、固有の不認可事由があります。
・債務者が将来において継続的に、または反復して収入を得る見込みがないとき
・債権額が5,000万円を超えているとき
・再生計画に定められた弁済額が、最低弁済額を下回っているとき
・住宅資金特別条項を利用する意思があるのに、再生計画に定めがないとき
給与所得者等再生の場合は、以下の不認可事由があります。
・給与もしくはこれに準ずる定期的な収入の変動幅が大きいとき
・7年以内に給与所得者等再生の認可決定を受けている場合
・再生計画に定められた弁済総額が、可処分所得に応じた最低弁済基準を下回っているとき
(5) 即時抗告期間・再生計画の確定
再生計画の認可または不認可の決定に対しては、即時抗告が認められています。即時抗告は、当該決定が官報公告された日の翌日から2週間以内に行う必要があります。この即時抗告期間が経過すると、再生計画が確定します。
再生計画案の作成方法について
再生計画案に必要な記載事項は、民事再生法第154条第1項に定めがあります。
(1)全部又は一部の再生債権者の権利の変更
(2)共益債権及び一般優先債権の弁済
(3)知れている開始後債権があるときは、その内容
これに加えて、住宅ローン特則を利用する場合は、(4)住宅資金特別条項を記載します。
その他にも、以下のケースに当てはまる場合は、その旨を記載することになります。
・債務者以外の者が債務を引き受けたり、保証人になったりするなど、債務を負担した場合(民事再生法第158条)
・異議等のある再生債権で、その確定手続が終了していないものの取り扱い(民事再生法第159条)
・別除権者の権利に関する定め(民事再生法第160条)
以下、基本となる(1)~(3)の記載事項及び住宅資金特別条項について、具体的に解説します。
(1)全部又は一部の再生債権者の権利の変更
再生債権について、①減額の方法や②変更後の返済期日を定めます。
①減額の方法
再生債権の元本および開始決定日以降の利息や遅延損害金の免除率を記載します。再生計画に基づく弁済額は、個人再生のルールに従って算出した「最低弁済額」以上としなくてはなりません。そのため、最低弁済額の計算を間違えないことが非常に重要です。最低弁済額については後述します。
②変更後の返済期日
再生債権の支払い方法は、原則として再生計画認可決定の日から3年で分割払いします。特別な事情があれば最長5年まで延長可能です。
(2)共益債権及び一般優先債権の弁済
共益債権とは、家賃や光熱費など、支払いがストップすると債務者の生活に支障が出る可能性がある債権のことです。一般優先債権とは、税金や社会保険料、給与債権など、民法や商法で一般の優先権が認められている債権のことを指します。
これらの債権は、実務上は「随時支払い」となりますが、滞納分があって支払い方法に関する弁済協定が存在する場合は、協定の内容を個別に記載します。
(3)知れている開始後債権があるときは、その内容
「開始債権」とは、再生手続開始後の原因によって生じた債権で、共益債権、一般優先債権、再生債権のいずれにも当たらない債権を指します。例えば、再生債務者が業務や生活に関係なく行った不法行為に対する請求権などが考えられます。
(4)住宅資金特別条項
住宅ローン返済中のマイホームを残したい場合は、再生計画案に住宅資金特別条項を定めます。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンだけを借金の減額対象から外し、返済の繰り延べやリスケジュールを行い、期限を猶予してもらう手続きです。
支払い方法は変更になるものの、元本・利息・遅延損害金を含めた全額の債務は残ります。
最低弁済額の計算方法
再生計画案作成の際は、最低弁済額を設定して計画弁済総額を決定します。最低弁済額とは、民事再生法のルールに従い、債権者に最低これだけは返済すると定めた金額のことです。
以下の3つのうち最も高い金額が最低弁済額となります。
(1)法律に定められた基準債権額による最低弁済額
(2)清算価値による最低弁済額
(3)(給与所得者等再生の場合)過去2年間の可処分所得
(1)法律に定められた基準債権額による最低弁済額
最低弁済額は民事再生法第231条第2項に定めがあり、減額前の債務総額によって決定します。

減額前の債務総額が5,000万円を超える場合は、個人再生をすることはできません。
(2)清算価値による最低弁済額
再生債務者が仮に自己破産したと仮定した場合、一定金額以上の財産は換価され債権者に配当されます。最低弁済額は、この配当額を上回らなくてはなりません。これを「清算価値保障の原則」と言います。
これは、債権者から見れば、再生債務者に(1)の法律上の最低弁済額を超える財産があるのに、個人再生で借金が大幅に減額されるのは納得できないからです。それならば、自己破産をしたほうが債権者にとっては得になる可能性があります。こうした事態を防ぐため、個人再生では、自己破産した場合と同じ、もしくはより多くの金額を債権者に支払う必要があります。
つまり、財産がある人が個人再生を行う場合、その財産を処分したらいくらになるかを計算しなくてはなりません。
例えば、借金が400万円ある人が個人再生をすると、(1)の法律上の最低弁済額では100万円になります。しかし、この人が200万円の土地と50万円の宝石を持っていたとすると、最低弁済額は財産を合わせた額である250万円になります。
清算価値の算出は、細かいルールがあって簡単ではありません。専門家に依頼されることをお勧めします。
(3)(給与所得者等再生の場合)過去2年間の可処分所得
個人再生手続の際、一般によく用いられる小規模個人再生ではなく、給与所得者等再生を選んだ場合は、「過去2年分の可処分所得」が最低弁済額となります。
可処分所得を算出する方法としては、給与から税金・社会保険料等を差し引いた手取り金額の2年分以上を計算します。
可処分所得算出の際は、法律で定められた方法に従って計算をする必要があります。計算方法は複雑で難しいので、専門家と十分に検討したほうが良いでしょう。
可決されやすい再生計画案とは
小規模個人再生の場合、債権者による再生計画の書面決議があります。この書面決議で過半数の債権者が不同意とした場合は、再生計画が廃止になってしまいます。債権者に再生計画案を可決してもらうためには、以下の点を注意して再生計画案を練りましょう。
(1)債権者と個別に交渉しておく
再生計画に難色を示す可能性がある債権者がいるケースでは、債権者と個別に話し合って調整するのも有効な方法です。債権者側の意見や要望を取り入れつつ再生計画案を作成すれば、再生計画案に異議を唱えられにくくなるでしょう。
(2)最低弁済額より高めに弁済額を定める
当然ながら、債権者としては最低弁済額よりも多めに弁済してくれる方が同意しやすくなります。
せっかく手間暇をかけて個人再生をするのですから、できるだけ借金を減らしたい、最低弁済額ギリギリにしたいと思うのは自然なことです。しかし、収入や支出の状況から勘案して、ある程度高めに弁済額を設定したほうが、可決されやすくなるでしょう。
(3)返済期間は原則通り3年とする
再生計画案の置いては、返済期間は原則として3年の分割払いですが、特別の事情がある場合は5年まで延長が認められます。
しかしながら、債権者側としては早めに支払ってもらったほうが良いですし、できるだけ原則通り3年の分割払いを設定する方が、可決されやすいでしょう。
個人再生の申立は弁護士に相談を
個人再生は借金を減額する手続きである「債務整理」の中でも、特に複雑で手間がかかることで有名です。中でも、再生計画案の作成は個人再生手続の中でも特に注意を要し、最低弁済額を正確に計算したり、現実的な返済プランを策定したりするほか、時には債権者との交渉も必要です。
個人再生の場合、申立人に収入が無いと手続きできないため、基本的に働き続けなくてはなりません。借金返済のために懸命に働きながら、複雑で注意を要する手続きを一人で行うのは無理があります。
また、個人再生は一年以上かかることもある長丁場の手続きで、その間に病気やアクシデントのなどのリスクがあります。弁護士に依頼しておけば、期間中に本人に何かあっても手続きを進めることができます。
個人再生は、手続き上は本人だけでも申し立てができますが、実務上は事前に弁護士に依頼することが必要になっています。特に再生計画案を練るにあたっては、法律知識が不可欠なので、債務整理の経験を積んだ弁護士とよく検討して作成されることをお勧めします。
弁護士に正式に依頼すると、弁護士が各債権者に受任通知を発し、以降は債権者から直接の連絡や督促が来なくなるというメリットもあります。督促が来ない間は返済をストップできるので、今まで返済に充てていたお金を個人再生の費用に充てられます。
一人で悩まずに、専門家に相談して心を軽くするという点でも、弁護士に相談するのはメリットがあります。債務整理の場合、昨今では無料で法律相談を受け付けている法律事務所も多いので、まずはお気軽に問い合わせされると良いでしょう。複数の法律事務所に相談して、気に入ったところに依頼するというスタンスでもOKです。
この記事の監修者

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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑


