個人再生の依頼中にギャンブルをしたらどうなる?

個人再生中にギャンブルをすると、最悪の場合、個人再生に失敗し、借金が減額されなくなります。個人再生手続きが続行可能な場合でも、ギャンブルで失った金額分が借金の返済額に上乗せされることになります。個人再生中にギャンブルをした場合の対処方法や、そもそもギャンブルで個人再生は可能か、個人再生が適しているケースについてまとめました。

個人再生手続き中にギャンブルをした場合の影響について

個人再生中にギャンブルをすることは禁止されており、裁判所に問題視されて個人再生手続きができなくなるおそれがあります。仮に手続きの継続が認められたとしても、借金の返済額が増額される可能性があるため、個人再生を弁護士に依頼したら、一切ギャンブルはしないで下さい。

個人再生は、法的な手続きにより借金の大半を減額する制度であり、その目的は借金に困っている人の経済的な再生を図ることにあります。個人再生によって生じた経済的なゆとりをギャンブルに使うことは、借金の大半を返してもらえなくなった債権者の権利を害することになり、個人再生の趣旨にも反します。

個人再生手続き中にギャンブルをすると、以下の影響が生じます。

(1)再生計画案が不認可になるおそれがある
(2)返済額が増額されるおそれがある

個人再生手続きの際には、裁判所に家計収支表を作成して提出したり、全ての銀行口座の通帳の写しを提出したりするため、ギャンブルでお金を使ったことが発覚するおそれがあります。

(1)再生計画案が不認可になるおそれがある

個人再生は、裁判所で手続きをして借金総額を5分の1~10分の1程度に大幅に減額する手続きです。しかし、借金がゼロになるわけではないので、減額された後の借金は3~5年かけて分割払いで返済しなくてはなりません。

借金の残額がいくらか、何年かけてどのように返済していくのかを定めたプランを「再生計画案」と言います。再生計画案は申立人が作成して提出し、これを裁判所に認可してもらわなければなりません。

ところが、個人再生計画中にギャンブルや投資、無駄遣いなどの浪費をしてしまうと、再生計画案が問題なく履行できるのか、履行可能性を裁判所に疑われてしまいます。最悪の場合は、再生計画案が認可されなくなります。

再生計画案が不認可になれば、再生手続きに失敗し、せっかく費用や手間暇をかけたのに借金が減額されなくなります。個人再生は債務整理の中でも特に手続きが面倒なので、不認可になってしまった場合のダメージは大きいです。

(2)返済額が増額されるおそれがある

弁護士に依頼後にギャンブルをしてしまった場合、不認可にならずに済んでも、借金の減額幅が少なくなり、当初の想定よりも多くの返済額を支払うことになる可能性があります。

再生計画案を作成する際、手元にある財産だけではなく、ギャンブルで浪費した金額を考慮して返済計画を立てなくてはなりません。浪費した分だけ自分の財産を目減りさせたため、残りの財産に浪費した金額を上乗せして再生計画案を作成することになります。

多くの金額を使ってしまうと、それだけ多くの返済をしなくてはならず、手続き中のギャンブルはデメリットしかありません。

個人再生手続き中にギャンブルをした場合の対処方法とは

弁護士に個人再生を依頼後、ギャンブルをしてしまったら、直ちに弁護士に正直に相談してください。

裁判所に提出する家計収支表や通帳の写しなどの書類は、弁護士も目を通しますので、ごまかしたり隠したりすることは難しいです。

裁判所への申立て前であれば、申立ての時に、依頼後にギャンブルをしたことを反省し、同じ間違いを繰り返さないと約束することで、再生計画が不認可にならずに済む可能性があります。その後、実際に一切ギャンブルをしなければ、裁判所もギャンブルによりお金を使い込んで家計を圧迫する可能性は低いと判断してくれるかもしれません。

仮に、ギャンブルをしていたことを黙っていて、弁護士には見つからなかったものの、裁判所が後から書類を精査して気が付いたという場合、反省をしておらず、再びギャンブルによりお金を使い込む可能性が高いと判断され、再生計画が不認可になる可能性が高まります。

黙っていても良いことはないので、早急に弁護士に打ち明けて、対応を共に検討してください。

「一度に1,000円くらいだったら…」「年に一度の大レースだけは…」という誘惑もあるかと思いますが、個人再生手続き中はやめておきましょう。特に、ギャンブルが原因の借金で個人再生に至った場合、のめりこんでしまう癖があると考えられますので、悪癖を断つためにもしっかりギャンブルをやめるようにしましょう。

そもそもギャンブルで個人再生は可能なのか?

ギャンブルによる借金でも個人再生は可能です。個人再生手続き中にギャンブルをしなければ、裁判所に借金の理由を問題視され、再生計画案が不認可になることはありません。

ギャンブルによる借金は、債務整理の中で好ましくないものと考えられています。怪我や病気、事業の破綻などと違い、偶然によって金儲けをしようとする心理「射幸心」によるものであることや、何度も同じ過ちを繰り返しやすいことが原因です。

特にギャンブルが問題視されるのは、自己破産です。自己破産は債務整理の中で最も効果が大きく、免責が許可されればどんな高額の借金もゼロになります。その代わり、「本当にこの人の借金をなくしてもいいのか」を裁判所がしっかりチェックします。ギャンブルが原因の借金は「免責不許可事由」と言って、破産法上、免責が認められないケースに当たります。

免責不許可事由は破産法252条に定めがあり、1項4号にギャンブルについて明記されています。

【破産法252条1項4号】
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

現実には、ギャンブルが原因の借金であっても、裁判所が裁量で免責を認める「裁量免責」により、数多くの人が免責を許可されています。とはいえ、詳しく調査が行われるため、自己破産の期間や費用も余計にかかる可能性が高いのです。また、ギャンブルをした額や事情、全体の状況によっては、必ずしも免責が受けられるわけではありません。

しかし、個人再生の場合は、借金の理由により申し立てが棄却されたり、再生計画が認められなくなったりする定めはありません。したがって、下記の個人再生ができる条件に当てはまれば、ギャンブルが原因の借金でも個人再生をすることができます。

【個人再生をする条件】

・債務総額が5,000万円以下であること(住宅ローンを除く)
・将来にわたって、継続して収入を得る見込みがあること
・債務者に支払い不能の生ずる恐れがあること
・(給与所得者等再生の場合)給料などの安定収入があって、その変動幅が少ないこと
・(給与所得者等再生の場合)過去7年以内に個人再生や自己破産、ハードシップ免責を申し立てていないこと

なお、再生計画が不認可となる条件については、民事再生法174条2項に定められています。

【民事再生法174条2項】
2 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
二 再生計画が遂行される見込みがないとき。
三 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
四 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

以上のように、借金の原因に関しては規定がありません。そのため、自己破産とは違って裁判所が問題視することはありません。

ただし、個人再生手続き中にギャンブルをしてお金を使い込んだ場合、返済計画が予定通り実行されるか裁判所から疑問視されます。また、誠実さに欠けると判断される可能性もあるでしょう。「再生計画が遂行される見込みがないとき」にあたるとして、再生計画が認可されない可能性があります。

個人再生が適しているケースとは

個人再生は、以下の方に適しています。

(1)ギャンブルによる借金の金額が大きい場合
(2)財産を手元に残したい場合
(3)自己破産の職業制限を受ける仕事をしている場合

(1)ギャンブルによる借金の金額が大きい場合

ギャンブルによる借金額が大きい場合、状況によっては自己破産よりも個人再生の方が問題を早期解決できる場合があります。

ギャンブルによる借金でも、自己破産で多くの人が免責されています。しかし、ギャンブルが原因の場合、「管財事件」と言って、破産管財人という破産のプロがついて詳しい調査を行います。管財事件は時間がかかり、費用の負担も大きくなります。

一方、個人再生の場合、借金の原因に関する調査は行われないので、自己破産よりも時間や費用の負担が少なく手続きを行える可能性があります。

もっとも、自己破産と個人再生どちらが適切かは、具体的な状況によっても異なります。債務整理の経験が豊富な弁護士に相談して、どちらの手続きを取った方がより負担が少ないか、よく検討されることをお勧めします。

(2)財産を手元に残したい場合

自己破産をすると、自己名義の不動産など、価値のある財産は処分・換金されて債権者に配当されます。

これに対し、個人再生には、財産を処分するプロセスがありません。そのため、預金や保険、自動車などの財産は、手元に残せます。

また、ローン中の不動産についても、住宅ローンを利用したマイホームであれば、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することで、家に住み続けながら借金を大きく減らすことができます。

住宅ローン特則を利用した場合、住宅ローン自体は減額されなくなりますが、リスケジュールは可能になるので、支払い可能な返済計画を練り直すことができます。

(3)自己破産の職業制限を受ける仕事をしている場合

警備員や生命保険の募集人、弁護士や社会保険労務士など、一部の職業は自己破産の手続き中に仕事をすることができません。免責が許可されて手続きが成功すれば再び元の仕事に復帰できますが、お金が苦しい状態で一時期でも仕事ができなくなるのは避けたいでしょう。勤め先に頼んで別の仕事をさせてもらえれば良いのですが、融通がきかない勤め先もあるでしょう。

これに対し、個人再生には職業制限はないので、どんな職業でも仕事を続けながら手続きをすることができます。

個人再生手続き中のギャンブル以外の注意点

個人再生手続き中は、ギャンブルをやめること以外にも注意すべき点があります。

(1)弁護士や裁判所に嘘をつかない

自己破産をすると、裁判所に経済状況に関する書類を提出するので、隠したり嘘をついたりしてもバレます。嘘をつくと誠実さが疑われ、裁判所の心証も悪くなり、手続きが認可されない可能性が高まります。

(2)特定の債権者のみに弁済しない

特定の債権者だけを優先して弁済することを「偏頗(へんぱ)弁済」と言います。個人再生手続きにおいては全ての債権者は平等に扱われなければなりません。「債権者が恩人だから…」「保証人に迷惑をかけたくないから…」などという理由があっても、特定の債権者を優先して弁済はしないで下さい。

(3)新たな借金をしない

自己破産手続き中に新たな借金をすると、不誠実な対応として再生計画案が不認可になる可能性が高まります。

(4)裁判所の求める手続きには誠実に応じる

個人再生の手続きは基本的に弁護士が行いますが、本人も手続きに参加する場面があり得ます。その際、尋ねられたことには正直に、素直に答えましょう。

また、特に再生計画案の提出期日は締め切りが厳格で、提出が遅れると個人再生に失敗します。書類の締め切り日には注意し、書類の作成や必要な修正は素早く行うことを心がけましょう。

(5)履行テストはしっかりやり遂げる

履行テストとは、減額後の借金を分割払いで返済し続けることができるかを試すテストのことで、多くの裁判所で行われています。具体的には、テスト用の口座に毎月指定された金額を振り込みます。これを怠ると、再生計画案が認められない可能性が高まります。履行テストは確実にやり遂げましょう。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑