過払い金とは?請求できる条件や発生する仕組み、対象業者について解説

過払い金が発生しているなら、お金を取り戻せる可能性があります。

そうはいっても「なぜ借金していただけで過払い金が発生するのか?」

「どういった条件であれば過払い金請求できるのか?

気になっている方も多いのではないでしょうか?

今回は過払い金の基本的な仕組みや発生する条件、対象となる金融業者などの基本知識をご紹介します。

そもそも過払い金とは?

過払い金とは、「利息制限法の上限を超過する高い利率で払い過ぎた利息」です。

法律上、お金を貸し付ける際には、利息制限法の制限内の利率を設定しなければなりません。

ところが過去には上限を超えて貸し付ける業者が多数存在しました。

実際には利息制限法を超える利率は無効となるので、払いすぎた利息を取り戻せます。

その過払い利息が、いわゆる「過払い金」です。

過払い金が発生する3つの条件と請求できる可能性の高い人

借金しているからといって、誰でも過払い金請求できるわけではありません。以下の3つの条件を満たす必要があります。すべての条件を満たしている方は、過払い金請求できる可能性が相当高いといえるでしょう。

2010年6月17日以前から借り入れをしていた

過払い金請求できるのは、2010年6月17日以前から借り入れをしていた人です。

2010年6月18日に改正法が施行されたため、その後はどこの業者も利息制限法を超過する利率での貸付をしていません。

また、多くの業者は2008年頃から段階的に利息制限法を超過する利率の設定を取りやめていったので、2008年以前から借り入れを継続していたなら、なおさら過払い金が発生している可能性が高いといえます。

借金を完済してから10年以内

過払い金請求できるのは、基本的に「借金を完済してから10年以内」です。過払い金請求権には時効があるからです。

2020年3月31日まで適用される改正前の民法では、完済後10年が過払い金請求権の時効期間となります。完済してから10年以上経過するとせっかくの過払い金を請求できなくなるので早めに対応しましょう。

ただし2020年4月1日以降は改正民法が適用されるので、時効期間が短縮される可能性もあります。改正民法では「請求できると知ったときから5年」となるからです。

過払い金が発生している可能性があるなら、早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。

消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用していた

過払い金が発生するには、利息制限法を超過した利率で取引していなければなりません。

制限利率内の取引では利息の払い過ぎにならないので、過払い金は発生しません。

過去に利息制限法の制限を超えた利率で貸付をしていたのは、消費者金融やクレジットカード会社のキャッシングです。

ただし同じクレジットカードでもショッピング利用の場合、過払い金は発生しません。

過払い金が発生する仕組み

そもそもなぜ過払い金が発生するのか仕組みをご説明します。

2010年6月18日に法改正が行われる前は、利息制限法を超過する利率で貸し付けても例外的に有効となる措置が設けられていました。債務者が「任意に」高額な利息を払った場合には、制限利率を超えても有効とされていたのです。このように、債務者が自分から高額な利息を払うことを「みなし弁済」といいます。

また利息制限法の制限利率と出資法の制限利率に差があり、その範囲内の金利であれば刑罰を受けない状況でした。利息制限法の制限利率は最大年率20%ですが、当時出資法の制限利率は29.2%だったのです。

そこで多くの貸金業者は、利息制限法を超過して29.2%以下の高額な金利で貸付を行っていました。このような「利息制限法を超過して出資法以内の金利帯」を「グレーゾーン金利」と言います。

ところが2006年1月13日、最高裁は事実上、みなし弁済規定を無効とする判決を下しました。これにより、それまで高額なグレーゾーン金利の利息を払っていた方は、「過払い金」として払いすぎ利息を取り戻せるようになったのです。

その後、最高裁の判決を受けて法改正が行われ、2010年6月18日から正式にグレーゾーン金利が撤廃されました。

実際には2008年頃から、多くの貸金業者は利息制限法を超過する利率での貸付を段階的になくしていたので、過払い金が発生する可能性が高いのは2008年以前の取引となります。

現在は消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用しても、過払い金は発生しません。

過払い金請求の対象業者

過払い金請求の対象業者は、主に消費者金融会社、街金やクレジットカードのキャッシングです。

ただし消費者金融会社でも昔から利息制限法を超過する利率を設定していなかった業者の場合、過払い金が発生しません。

過払い金請求できる業者の例

  • アコム
  • プロミス
  • アイフル
  • レイク(GEコンシューマファイナンス、現在は新生銀行カードローン)
  • UFJニコス
  • 三井住友カード
  • セゾン
  • オリコ
  • イオン
  • ジャックス
  • JCB
  • その他の街金融

貸金業者の中には社名変更したり、合併や統合によって会社名やサービス名が変わったりしたものもあります。廃業した業者もあるので、気になるなら早めに専門家に相談して状況を確認しましょう。

またクレジットカードの場合、ショッピング利用は過払い金請求の対象になりません。キャッシングのみが対象となるので、注意が必要です。

過払い金請求できない業者や借金の種類

以下のような借金は過払い金請求の対象になりません。

  • モビット
  • キャッシュワン
  • オリックス
  • アットローン(現在はSMBCコンシューマファイナンス)
  • 銀行カードローン
  • クレジットカードのショッピング
  • 奨学金
  • 住宅ローン
  • 車のローン
  • 公庫のローン

モビットやキャッシュワン、アットローンなどは貸金業者ですが、法改正前から制限利率内で貸付をしていたので、過払い金が発生しません。

銀行カードローンも従前から制限利率内で貸付をしていました。

奨学金や住宅ローン、公庫のローンなどの利率は低いので、利息制限法を超過することはありません。

過払い金請求の注意点

過払い金請求するときには、以下の3点に注意してください。

時効に注意

過払い金請求権には時効があります。

2020年3月31日までの分であれば、完済後10年以内に請求しなければなりません。

その後の分の時効期間はさらに短くなる可能性もあります。

過去に消費者金融やクレジットカードで借金していたなら、早めに専門家に相談して過払い金請求の手続きを進めるべきです。

ショッピングとキャッシングの利用がある場合

クレジットカードの利用者は、ショッピングとキャッシングの両方を利用しているケースが多々あります。

ショッピングの残債がある状態で過払い金請求すると、キャッシングの過払い金とショピングの残債を相殺して精算しなければなりません。

結果として過払い金の方が多ければ、相殺した残りの過払い金を取り戻せます。一方、借金が残ったら、分割で払っていかねばなりません。

借金返済中の場合

借金返済中の方でも、2008年以前から継続的に取引しているなら過払い金請求できる可能性があります。

ただし取引状況によっては、必ずしも過払い金が発生するとは限りません。

残債を減らせても一定金額が残る可能性があります。その場合、残った金額は分割で返済しなければなりません。

ブラックリストについて

過払い金請求をしても、個人信用情報に事故情報は登録されないのでブラックリストの状態になりません。ただしショッピングとキャッシングを相殺してショッピングの残債が残ってしまった場合や、借金返済中の方で全額の完済ができなかった場合など、「結果的に負債が残って返済が必要になった」場合には、ブラックリスト状態になります。

残債が残っていない完済後の過払い金請求であれば、ブラックリストになる心配は要りません。

過払い金請求には時効もあるので、心当たりがあればすぐに対応すべきです。気になる方は、早めに弁護士に相談してみてください。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑