債務整理の種類と特徴について
債務整理の手法には主に3つ(過払い金請求を合わせると4つ)の種類があり、行うときにはそのときの状況に適した方法を選択しなければなりません。
それぞれの特徴やメリット、デメリットを押さえておきましょう。
今回は債務整理の種類や特徴、選び方を解説します。借金問題にお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
債務整理の4つの方法と期間
債務整理の方法には主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。過去に高額な利息を払っていた方は「過払い金請求」できる可能性もあります。以下でそれぞれの特徴とかかる期間をみてみましょう。
1.任意整理
任意整理は債権者と直接話し合って支払う金額や支払い方法を取り決める手続きです。
合意後の利息は全額カットしてもらえるケースが多く、元本のみ返済できれば完済となります。月々の支払額も減るケースが多数です。
かかる期間は2~3か月程度が標準的です。
2.個人再生
個人再生は裁判所へ申し立てて借金返済額を大きく減額してもらえる手続きです。
元本ごと大きく減額してもらえるので、減額幅は任意整理より大きくなります。
かかる期間は半年~8か月程度です。
3.自己破産
自己破産は裁判所へ申し立てて借金を免除してもらえる手続きです。
すべての支払が免除されるので、手続き後に支払いが残りません。
かかる期間は「同時廃止」の場合に2~3か月程度、管財事件の場合に半年~8か月程度です。
4.過払い金請求
過払い金請求は、過去に払いすぎた利息を取り戻す手続きです。
かつて利息制限法を超過して利息を支払いすぎていた人が、払いすぎた利息を返還請求して払い戻しを受けます。
かかる期間は2~3か月程度が標準的です。
債務整理のメリット・デメリット
債務整理をするとどういったメリットやデメリットがあるのか、手続きごとにみてみましょう。
1.任意整理
任意整理のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 借金返済額を減らせる
- 月々の返済額を減らせる
- 手続きの負担が小さい
- 費用が安い
- 財産がなくならない
- 保証人に迷惑をかけずに済む
- 対象とする債権者を選べる
デメリット
- 借金の減額幅が小さい
- 手続き後に支払いが必要となる
- 最低限の収入がないと利用できない
- 債権者と合意できないと失敗する
- 債権者が任意整理の話し合いに応じないケースがある
- 手続き後、いわゆるブラックリストの状態になる
2.個人再生
個人再生のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 借金を大きく減らせる
- 住宅ローン特則を適用すれば家を守りやすい
- 財産がなくならない
- 給与差押を止められる
デメリット
- 手続きが難しく負担が大きい
- 費用が高い
- 対象とする債権者を選べない
- 保証人に迷惑をかけてしまう
- 支払い能力がないと利用できない
- 手続き後に支払いが残る
- 手続き後、いわゆるブラックリストの状態になる
3.自己破産
自己破産のメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 借金が0になる
- 支払い能力がなくても利用できる
- 手続き後に支払いが残らない
- 給与差押を停止または失効させられる
デメリット
- 手続きが複雑で負担が大きくなる
- 管財事件の場合、費用が高い
- 一定以上の財産がなくなる
- 手続き中、一定の職業が制限される
- 手続き後、いわゆるブラックリストの状態になる
4.過払い金請求
過払い金請求のメリットとデメリットをみてみましょう。
メリット
- 現金が戻ってくる
デメリット
- 特になし(ブラックリスト状態にはなりません。)
債務整理後に起こることや生活への影響
債務整理をすると、以下のようなことが起こって生活に影響が及ぶ可能性があります。
1.クレジットカードやローンを使えなくなるケースが多い
まず、過払い金請求以外の債務整理手続きをとると、いわゆる「ブラックリスト」の状態になります。ブラックリストとは、個人信用情報に事故情報が登録されてローンやクレジットを利用できなくなった状態です。
クレジットカードの新規発行、住宅ローンや車のローンなどの利用などはできませんし、奨学金など他人の借金の保証人にもなれません。
ブラックリストの期間はおよそ5~10年程度です。
2.自己破産すると財産がなくなる
自己破産すると、生活に必要な最低限を超える資産が失われます。預金や車、家や保険などが失われる可能性があります。
他の手続きの場合、財産は基本的になくなりません。
3.周囲にバレないケースが多い
「債務整理をすると周囲に知られるのでは?」と心配される方が少なくありません。
ただ債務整理を周囲に秘密で進めることは可能です。
個人再生や自己破産でも家族に知られず行っている方がたくさんいます。
周囲に知られたくない場合、当初に依頼する専門家へ「誰にも知られず手続きしたい」と伝えましょう。手続き中、同居の家族などに知られないよう配慮してもらえるでしょう。
なお自己破産や個人再生すると官報公告されますが、官報を読んでいる人が少ないのでこれによって周囲に知られる心配もほぼありません。
債務整理しても変わらないこと
債務整理しても、以下のようなことについては変化がありません。
1.保険への加入
生命保険への加入、契約者貸付などは今までとおり自由にできます。
2.不動産の賃貸借契約の締結
賃貸アパートやマンションなどの契約へも基本的に影響ありません。
3.給料の受け取りや財産の取得
給料やその他の財産取得も自由にできます。債権者にとられることはありません。
4.年金や生活保護の受け取り
年金や生活保護受給金に対する影響もありません。
5.戸籍や住民表、免許証やパスポートなどの記録
これらの公的書類に何らかの記載が行われることはありません。
状況別、債務整理手続きの選び方
1.任意整理すべきケース
- 借金が300万円以下(ただし収入が高ければ300万より高額でも可)
- ある程度の支払い能力がある
- 失いたくない財産がある
- 保証人のついている借金がある
2.個人再生すべきケース
- 安定した収入がある
- 住宅ローンを利用している
- 借金額が大きくなっていて任意整理では対応できない
- 失いたくない財産がある
3.自己破産すべきケース
- 支払い能力がない
- 借金額が大きくなりすぎて個人再生では対応できない
- 財産がない
4.過払い金請求すべきケース
- 過去(2008年以前)に消費者金融やクレジットカードを利用していた
債務整理を弁護士に依頼するメリット
債務整理するなら弁護士に依頼するのがおすすめです。以下では弁護士に依頼するメリットをみてみましょう。
1.適切な手続きを選択できる
債務整理にはいくつか種類があり、適切な方法を選択しなければなりません。
弁護士に依頼すると状況に応じた最適な方法を選択できます。
2.支払いの督促が止まる
債務整理を弁護士に依頼すると、債権者からの督促が止まります。電話や郵便による取り立てがピタッとおさまるので、精神的に楽に過ごせるようになるでしょう。
3.スムーズに手続きを進められる
債務整理を自分で進めようとすると、初めてのことばかりで戸惑ってしまうものです。
専門家へ依頼した方がスムーズで間違いを起こさずに手続きを進められるメリットがあります。
4.手間がかからない
債務整理に自分で対応すると大変な手間がかかりますが、弁護士にまかせてしまえば手間もかかりません。任せていればほとんど自動的に借金が減免されるイメージです。
債務整理にはそれぞれ特徴、メリット・デメリットがあり、状況に応じた最適な手続きを選択しなければなりません。自己判断で対応すると間違いを起こしやすいので注意が必要です。借金問題にお困りの場合には、まずは一度債務整理に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。
この記事の監修者
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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑