自己破産の同時廃止とは?管財事件との違い、要件や費用、注意点を解説!

自己破産の手続きには同時廃止と管財事件の2種類があります。同時廃止になると期間も短く済みますし、費用も安くなるので破産者にとって大きなメリットがあるといえるでしょう。

同時廃止になる管財事件になるかについては一定の基準があり、裁判所によって振り分けられます。

今回は自己破産で同時廃止になる要件や管財事件との違い、費用や注意点を解説します。
これから自己破産しようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

自己破産における同時廃止とは?

自己破産における同時廃止とは、破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止される簡易な破産手続きです。

破産する場合、本来は破産者の財産を換価して債権者へ配当したり破産者に問題行動がないか観察したりするため、管財人を選任しなければなりません。ただ財産もなく、問題行動もない人の場合、管財人を選任する必要性は低いといえます。
そこで財産がほとんどなくギャンブルや浪費等の問題行動もない人については、破産管財人が選任されずにすぐに破産手続きを終了するのです。それが同時廃止の手続きです。

同時廃止の場合、破産手続開始決定と同時に破産手続きが廃止(終了)するので、実質的には破産手続きとして何も行われません。その後すぐに免責の判断が行われます。

管財事件と同時廃止の違いとは

自己破産の手続きには同時廃止以外に「管財事件」という類型があります。管財事件は、原則的な破産手続きであり、管財人が選任されて実質的な破産手続きが進められるものです。
以下で同時廃止と管財事件の違いをみていきましょう。

管財人が選任されるかどうか

まずは管財人が選任されるかどうかが異なります。管財事件の場合には破産管財人が選任されますが、同時廃止の場合には選任されません。

財産が配当されるかどうか

破産者の財産が換価(現金化)されて債権者へ配当されるかどうかについても違いが生じます。
管財事件の場合、破産者の財産のうち生活に必要な最低限度を超える部分は換価されて債権者へ配当されます。一方、同時廃止の場合にはもともと財産がほとんどないので、換価や配当は実施されません。

郵便物が転送されるかどうか

同時廃止と管財事件では、郵便物の転送の有無も異なります。
同時廃止の場合、破産手続開始決定後も郵便物は転送されません。従前とおり、破産者の手元に郵便物が届きます。
管財事件の場合、破産手続開始決定後は郵便物が管財人へ転送されるようになります。破産者は郵便物を管財人から受け取らねばなりません。

転居制限があるかどうか

同時廃止と管財事件では、転居や長期旅行の制限についても違いがあります。
管財事件の場合、破産手続開始決定後、破産者は自由に長期旅行や引っ越しができません。裁判所の許可が必要になります。
一方、同時廃止の場合にはこういった制限がないので、自由に旅行や引っ越しができます。

裁判所へ行く回数

同時廃止と管財事件では、破産者が裁判所へ行かねばならない回数や頻度も異なります。
管財事件になると、破産者は債権者集会へ出席しなければなりません。一方、同時廃止の場合には,債権者集会は開かれません。免責審尋のために1回だけ裁判所へ行けばよいケースが多数です。
同時廃止の流れは管財事件と比べて簡略化されており、かかる期間も短く済みます。
管財事件の場合には半年程度はかかりますが、同時廃止の場合、2~3か月で終了するケースが多数です。

手続が簡略化されていて、期間が短く済むのは同時廃止のメリットといえるでしょう。

管財予納金が必要か

同時廃止と管財事件では、かかる費用についても違いがあります。
管財事件の場合、管財予納金が必要になるので費用が高額になります。管財予納金の金額は最低20万円です。ただし、裁判所によって異なる場合があり、また一定以上の財産がある場合や、事案の内容により、予納金が高額となる場合があります。
一方、同時廃止の場合には管財予納金は不要なので、費用はかなり低額です。弁護士費用を入れなければ2万円以内で手続きを終えられます。

弁護士費用

同時廃止と管財事件では、弁護士費用も異なります。管財事件の方が手間がかかる分、弁護士費用が高めに設定されているケースが多いからです。費用が安く済むのも同時廃止のメリットといえるでしょう。

同時廃止になる要件はどういうものか

自己破産が同時廃止になるにはどういった要件を満たさねばならないのでしょうか?
管財事件と同時廃止は裁判所が振り分けます。各地の裁判所で振り分け基準が定められているので、一般的な基準をみていきましょう。

同時廃止になるのは、管財事件にならない場合です。管財事件になるのは以下のようなケースです。

一定以上の財産がある

生活に必要な最低限を超える財産がある場合、財産を換価配当しなければならないので管財事件になります。たとえば東京地方裁判所の場合には33万円以上の現金がある場合や個別財産として20万円以上ある場合などに管財事件になります。

財産の有無が不明

破産申立時において財産がどのくらいあるのか不明な場合、管財人による調査が必要なので管財事件になる可能性が高まります。

免責不許可事由がある

浪費やギャンブルなどの免責不許可事由があると、本当に免責させて良いのかどうかを管財人が調べなければなりません。免責不許可事由とは、免責(借金などの負債の免除)を受けられなくなる一定の事情です。
免責不許可事由がある場合には免責させてもよいかどうかを観察するために破産管財人が選任されるので管財事件になります。

個人事業主か法人代表者

個人事業主や法人代表者が破産する場合には原則として管財事件になります。

同時廃止になるのは、上記の全てにあてはまらないケースと考えましょう。

同時廃止にしたい場合の注意点

同時廃止になるのは財産がほとんどなく免責不許可事由もない場合です。
ただし財産隠しは絶対にしてはなりません。財産を隠すとそれ自体が免責不許可事由になってしまいます。
同時廃止にしたいなら、債務整理の経験豊富は弁護士に相談して、なるべく同時廃止で済ませるにはどうすればよいか相談してみましょう。同時廃止にするのが可能な状況なら、同時廃止で終わるように手続きを進めてくれるでしょう。
財産が一定以上ある場合などには同時廃止にできないので、その場合には管財事件として進めざるを得なくなります。

同時廃止になる場合の手続きの流れ

同時廃止の手続きの流れ

同時廃止の手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。

  1. 弁護士に依頼する
  2. 受任通知が送られる
  3. 必要書類を集める
  4. 破産申立をする
  5. 免責審尋がある
  6. 免責される

まとめ

自己破産には同時廃止と管財事件の2種類があり、同時廃止になると破産者にかかる負担が非常に小さくなります。ただし破産者が同時廃止を選べるわけではありません。同時廃止にしたい場合、地域の破産申立似積極的にかかわっている弁護士に相談してみるとよいでしょう。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑