カード破産とは 破産する原因と対応策
カード破産は自己破産の一種で、クレジットカードの使い過ぎが原因で破産することを言います。コロナ禍以降増加しているといわれるカード破産の原因と、支払いがどのくらいの金額だと危険信号なのか、滞納し続けるとどうなるか、自己破産のデメリット、カード破産しそうな時の対応策などをまとめました。
目次
カード破産とは
カード破産とは、主にクレジットカードの使い過ぎにより借金がかさんで破産することです。自己破産の一種で、近年増加しているといわれています。
クレジットカードは手持ちの現金がなくても使え、ポイントもたまる便利なサービスです。最近ではオンラインショッピングや、コンサートなどのイベントのチケット購入がクレジットカード払いのみとなっているケースも増えており、多くの人が一枚は持っているのではないでしょうか。
カード破産が増えた原因の一つには、コロナ禍によりキャッシュレス決済が人気になったことと、人と直接会わなくて済む通販の利用が増加したことが挙げられます。また、在宅時間が増えたストレスで、オンラインゲームやサブスプリクションのサービスにお金を費やす人も増えました。
クレジットカードは現実のお金に比べて、お金を使っているという意識が乏しく、無自覚に使ったり、つい使いすぎたりしてしまうことがあります。
また、物価高や電気料金など各種公共料金の値上げで当面の生活費に困っている人が増え、間に合わせで支払い期日を先延ばしできるカード払いを選択し、それでも支払いに困った場合は他社から借金をして支払う、といったケースもあります。
クレジットカードでリボ払いにしていると、毎月一定の金額を支払えばよいので家計は楽になります。しかし、リボ払いは支払い残高が増えるほど、また、支払期間が長くなるほど、支払わなければならない利息も増えていきます。長い間返済しているのに借金がちっとも減っていない、という事態に陥りやすいのです。
こうした事情から、借金が返済困難になり、カード破産に至るといわれています。
どれくらいの金額だとカード破産の危険がある?
カード破産に至る負債の金額は、収入や支出の状況にもよるので一概には言えませんが、一般的には、クレジットカードの支払い残額と、住宅ローンや車のローンを除く借金の残額を足した負債の金額が年収の3分の1を超えると危険ラインだとも言われています。
とはいえ、このラインに至らなくとも、クレジットカードの利用料金の支払いが極めて困難になっていたり、すでに支払いを滞納していたり、他社から借金をしてまでカードの支払いにあてている場合は、早急に何らかの対策が必要といえます。
クレジットカードの支払い、滞納し続けるとどうなる?
クレジットカードの支払いを滞納し続けると、業者からの厳しい督促が繰り返し行われるほか、クレジットカードが使えなくなり、信用情報に傷がついて新たな借金やクレジットカードの利用が難しくなります。また、業者から訴訟を起こされて給与や財産を差し押さえられる可能性があります。
クレジットカードを利用している人の中には、支払いを拒み続ければ、やがて時効により支払い義務が消滅するのではないか、と考える人もいます。しかし、時効に頼って問題を解決するのはお勧めしません。
滞納が続くと、このような流れで事態が悪化していきます。
(1)督促
まず、当該クレジットカードが使えなくなり、電話やはがき、郵便で督促が繰り返し届くようになります。
(2)クレジットカードの強制解約
それでも無視を続けると、当該クレジットカードが強制解約になります。
(3)信用情報機関に情報が記録される
このころには業者は信用情報機関に借金の滞納について記録しているはずです。
信用情報機関とは、個人のお金の貸し借りを記録する機関のことで、日本に3社があり、日本の金融機関や貸金業者、クレジットカード会社はこの3つのいずれかに加盟しています。この信用情報機関に借金を何か月も滞納した事実が記録されると、以後、一定期間、新たな借金の融資やクレジットカードの審査に落ちる可能性が高くなります。
返済を拒んでいるカード会社が1社だけでも、信用情報機関に滞納が記録されると、その信用情報機関に登録しているすべての金融機関等が記録を参照するため、新規の融資やクレジットカードの作成・利用が難しくなるのです。
(4)訴訟提起による財産差し押さえ
滞納を一定期間以上続けると、業者に訴訟を提起され、強制執行手続きによって財産や給与を差し押さえられることがあります。給与を差し押さえられると、手取り金額が月額44万円以下の場合は4分の1までを差し引かれます。月収が手取り20万円なら5万円を差し押さえられ、15万円しか手元に入ってきません。また、勤め先に通知が行くので、給与差し押さえを受けたことが勤め先に分かってしまいます。
また、預金や、不動産を持っている場合は不動産が差し押さえられてしまうこともあります。
このように、時効消滅を狙って支払いを拒むのは非常にデメリットの多いやり方と言えるでしょう。業者により差し押さえられた給与や財産は原則として返ってきません。このような事態になる前に、できればクレジットカードの支払いを滞納する前に、早めに弁護士等の法律の専門家に相談して、問題の解決を目指されることをお勧めします。
カード破産(自己破産)することによるデメリット
クレジットカードの使い過ぎが原因で自己破産をすると、その後5年ほど、借金やクレジットカードの使用・新規作成が難しくなります。また、自己破産の際不動産などの財産を持っていると裁判所により換価・処分されます。
(1) 借金やクレジットカードの使用・新規作成が一定期間出来なくなる
自己破産をすると5年ほどの期間、新たな借金やクレジットカードの使用、新規作成が出来なくなります。取引のあった会社だけではなく、基本的にすべての金融機関や貸金業者・カード会社の借り入れが難しくなると考えてください。
その理由は、自己破産をすると信用情報機関に事故情報として登録されるからです。信用情報機関には、クレジットカードの支払いを滞納した場合も事故情報として記載されますが、自己破産などの債務整理を行った場合にも情報が残ります。その期間は、自己破産の場合は約5年です。
5年が経過すると信用情報機関の記録から自己破産の情報が削除されるため、再び借金やクレジットカードの使用ができるようになります。
(2)不動産などの財産が裁判所により処分・換価される
不動産など、一般的には財産価値20万円を超える財産を有している場合、自己破産をすると裁判所によって財産を処分され、換価されて債権者に分配されます。債権者とは、お金を貸した企業や個人、クレジットカード会社などのことを言います。
自己破産は、借金に困っている人を救済するために、本来ならばお金を受け取れる債権者の正当な権利を犠牲にする制度です。そのため、破産手続きをする人に財産がある場合は、お金に換えて債権者に分配し、いくらかでもお金を返還するという仕組みになっています。
とはいえ、自己破産はあくまで破産する人が生活を再建するための制度ですから、家財道具や生活用品など、生きていくために必要な財産は処分・換価の対象にはなりません。また、市場価値が20万円を超えなければ、車やパソコン、スマホやゲームなどといった品物も手元に置くことが出来ます。
(3)その他のデメリット
その他のデメリットとしては、自己破産手続中は警備員や保険外交員、社会保険労務士などの一部の職業に就くことが出来なくなります。これらの職業制限は自己破産手続きが無事に終われば無くなります。
また、借金に保証人がいた場合は、保証人に請求が行くので迷惑が掛かります。
自己破産後、クレカは作れるの?
クレジットカードは、自己破産後5年間は使えなくなり、新規の作成はもちろん、既存のカードを継続して使用することも難しくなります。5年を経過することで信用情報機関の記録が削除されるため、再びクレジットカードを作成・利用できるようになります。
インターネットを見ると、「ブラックリスト入りしても〇社のカードは使えた」といった口コミを見かけることがありますが、これはカード会社が信用情報機関の記録をチェックしていなかったためと考えられます。カード会社は、遅くともカードを更新するタイミングで、記録をチェックして自己破産情報に気が付くため、カードの更新は難しいと考えてください。
クレジットカードが使えないと生活が不便になりますが、自己破産に至った理由がクレジットカードの使いすぎである場合、5年間カードを使えないことは、カード払いに頼る癖を治す良い機会ということもできます。
最近ではクレジットカードを用いなくともキャッシュレスでの支払い手段が増えていますので、カードがなくても生活に大きな支障はないでしょう。
カード破産後に使える支払い方法
カード破産後でも、「デビットカード」や「プリペイドカード」、「スマホ決済」や「家族名義の家族カードを使う」といった、破産した人本人の信用情報機関の記録を閲覧しない支払い方法であれば問題なく使うことができます。
(1)デビットカード
デビットカードは銀行口座に紐づけされており、使用すると口座に入っているお金から即座に引き落としされる仕組みのカードです。口座に入っているお金以上の買い物は出来ません。
信用払いではないため審査がなく、クレジットカードと同様に使えるため、クレジットカードの仕組みに不安がある人が多く持っています。近年では無料で作れる銀行も増えています。
(2)プリペイドカード
プリペイドカードとは、カード内に入っているお金の分だけ使用できるカードです。図書カードのように使い切りタイプもありますが、交通系ICカードのSuicaやPASMO、コンビニで使えるnanacoのようにチャージして繰り返し使うカードが主流です。
(3)スマホ決済
PayPayやモバイルSuica、Amazon Pay、楽天ペイなど、オンラインショッピングに対応しているスマホ決済も増えてきました。支払い方法としては、プリペイドカードのようにあらかじめお金をチャージしておく「前払い」式と、デビットカード方式の「即時払い」式、携帯料金と一緒に支払う「後払い式」(キャリア決済)があり、自分に合った支払い方法を選択して登録できます。
後払い方式はクレジットカードのように使いすぎてしまうおそれがあるので、前払い式または即時払い式をお勧めします。
(4)家族名義の家族カード
クレジットカードの中には、クレジットカードの名義人と生計を同じくする家族が使える「家族カード」を発行している企業があります。この場合、名義人の信用情報に問題がなければ、自己破産をした家族も使うことが可能です。
カード破産しそうになったらやるべきこと
自己破産には借金の制限や財産の処分などのデメリットが伴い、何よりカード会社に迷惑をかけてしまいます。カードの使い過ぎで支払いが苦しくなった場合は、以下の手段を検討してみましょう。
(1)手放せる財産がないか検討する
カードで購入した物の中に手放せる高価な品物がある場合、積極的に売ってお金を返済に充てましょう。生活に必要のない物はもちろん、生活に必要な物であっても、高価な4Kテレビや高性能なパソコンのように、安い中古品でも十分代替えがきくものは思い切って売ってしまいましょう。ただし、購入金額を支払い終えていない物を売却してはいけません。
(2)家族・親族に相談して援助してもらう
家族や親族などで、資力があって話を聞いてもらえそうな人がいる場合、その人から援助を受けたり借入れをして支払いを行う方法もあります。お金のことは話しにくいかもしれませんが、家族・親族等の場合、利息や返済期間、返済方法等について、一般的な企業よりも融通をきかせてくれることが多いからです。
しかし、クレジットカードの借金を家族から借り入れて返済しても,借金を借り換えただけで,それは根本的な解決ではありません。家族から借りたお金でも、しっかりと返さなくては後でトラブルの原因になります。「家族だと甘えてしまって返さなくなりそう」という人は頼るべきではないでしょう。
(3)弁護士に相談する
弁護士に相談することで、自己破産以外の借金解決方法で済ませられる可能性があります。例えば、任意整理で対処可能な事例ならば、財産の処分をされることもなく、同居の家族にも知られることなく借金の負担軽減が可能です。
また、支払いを滞納している場合、弁護士に依頼することで、督促をストップすることができます。
クレジットカードの支払いが厳しくなってきた。弁護士に相談してもOK?
クレジットカードの支払いが厳しくて困っている場合、問題が大きくなる前に早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
自己破産は借金が支払えなくなった人が生活を再建するための手続きであり、世間で言われているほど恐ろしいものではありませんが、財産の処分など、相応のデメリットが発生します。支払いの問題が比較的軽いうちに専門家に相談すれば、任意整理や個人再生など、もう少しデメリットが少ない方法で解決できる可能性が高まります。
自己破産や任意整理といった借金の法的な解決方法を債務整理と言いますが、債務整理の相談については、多くの法律事務所が無料で対応しています。相談のみで実際に依頼をしなくとも問題はありませんので、気軽に問い合わせされることをお勧めします。
この記事の監修者
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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑