自己破産で免責されるとどうなる?免責不許可になった場合の対処方法も合わせて解説!
個人が自己破産する目的は「免責」です。免責されると借金をはじめとした負債の支払義務が免除されるので、支払の必要がなくなります。反対にいうと、免責されなければ借金などが残ってしまうので、自己破産する意味がありません。
この記事では自己破産の免責とは何か、免責を受けられる条件や免責不許可になった場合の対処方法などを解説します。
これから自己破産しようとしている方、免責を受けられるか心配な方はぜひ参考にしてみてください。
目次
自己破産の免責とは
自己破産の免責とは、破産者の負債支払義務を免除する裁判所の決定です。
裁判所から免責許可決定を出してもらえたら、借金だけでなくほとんどの負債の支払義務をなくしてもらえます。
免責によって払わなくて良くなる負債として、以下のようなものがあります。ただし,債権者一覧表に記載した負債に限られます。
- 業者からの借金(カードローンやキャッシング教育ローンや車のローンなど)
- 銀行からの借り入れ
- 保証債務
- 個人からの借金
- 奨学金
- 立替金
- 未払い家賃
- 未払いのスマホ代、ネット通信料金
- 未払いの水道光熱費
- 損害賠償債務
免責許可決定後の手続き
自己破産で裁判所が免責許可決定をしても,すぐに免責の効力が生じるわけではありません。免責許可決定が「確定」しないと効果が発生しないのです。
免責許可決定から免責決定が確定するまでの間はだいたい1か月程度です。
具体的にどういった手続きになるのかみてみましょう。
免責決定確定までの流れ
免責許可決定が下りると、2週間くらい経過してから官報公告されます。
その後2週間が「即時抗告」の期間となります。即時抗告とは、免責許可決定に対する異議申し立ての手続きです。債権者などの関係者は免責許可決定に不服がある場合、期間中に即時抗告ができます。
即時抗告が行われないまま2週間が経過すると、免責許可決定が確定します。
このように、免責許可決定が出ると2週間後に官報公告が行われ、その後2週間程度で確定するので、免責許可決定が出てから確定するまでに1か月程度がかかるのです。
ただその期間中、破産者がすべきことはありません。通常は待っていれば免責許可決定が確定します(なお債権者が即時抗告した場合には反論などの対応を求められます)。
免責許可決定の効果
免責許可決定が下りるとどういった効果があるのか、みてみましょう。
非免責債権以外が免責される
まずは借金などの負債の支払義務がなくなります。
ただし「財団債権」や「非免責債権」については支払義務が残ります。これらの債権については次の項目で詳しくご説明します。
財団債権や非免責債権のない方の場合、破産手続開始決定前の負債については一切の支払が不要になると考えましょう。
資格制限が解除される
自己破産をすると、資格制限を受けます。資格制限とは、一定の職業や資格が制限されることです。たとえば弁護士や司法書士、税理士や宅建士、警備員や保外交員などの資格を制限されるので、該当する人は仕事を続けられなくなってしまうおそれがあります。
免責許可決定が確定すると、資格制限も解除されるので元のように仕事をできるようになります。
居住制限が解除される
自己破産で管財事件になった場合には「居住制限」が行われ、引っ越しや長期旅行をするためには裁判所の許可が必要になります。
免責許可決定が確定すると居住制限も解除されるので、自由に引っ越しや旅行、出張などができるようになります。
郵便物の転送解除との関係
自己破産で管財事件になると、郵便物が管財人の元へ転送されるようになります。すると破産者は管財人の事務所へ郵便物を取りに行かねばなりません。
郵便物の転送は、免責許可決定前に解除されるのが通常です。
破産手続きが終了すると郵便物の転送は解除されますし、ケースによっては第1回目の債権者集会が終わった時点で解除されることもあります。
免責許可決定が出る頃には破産者は自分で郵便物を受けとれる状態になっているといえるでしょう。
免責されない債権の種類
自己破産で免責許可決定が出ても、すべての負債が免責されるわけではありません。
財団債権や非免責債権は、免責許可決定後も残るので、支払をする必要があります。
以下でどういった負債が免責の対象外になるのか、みてみましょう。
財団債権
財団債権とは、自己破産の手続きによらずに支払いを受けられる債権です。
主には税金や健康保険料などが該当します。
財団債権は破産手続き中であっても支払の必要がありますし、免責後も支払わねばなりません。
非免責債権
非免責債権とは、免責許可決定があっても免責されない債権です。
以下のようなものが該当します。
- 税金や健康保険料、年金保険料(財団債権に該当しないもの)
- 故意や重過失で加えた人の生命や身体に対する不法行為にもとづく損害賠償請求権
- 悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権
- 婚姻費用や養育費
- 破産者が知りながら債権者名簿に載せなかった債権者の債権
- 個人事業主が雇用していた従業員の給料
- 罰金
上記のような負債を負っていた場合には、免責許可決定後も支払わねばなりません。
たとえば税金を滞納していた場合、税務署や自治体などと協議して支払い方法を取り決めるべきです。放っておくと差し押さえをされる可能性もあります。
どれくらいの確率で免責されるのか?
自己破産には免責不許可事由がある
自己破産をしてもすべてのケースで免責されるとは限りません。
自己破産には「免責不許可事由」があるからです。免責不許可事由とは、該当すると免責を受けられなくなる事情です。
免責不許可事由には以下のようなものがあります。
- 浪費やギャンブルで借金した
- FXや仮想通貨、先物取引など投機行為をした
- 支払意思や支払い能力がないのに偽りを言って借り入れた
- 著しく不利な条件で借り入れた
- 債権者を害する目的で財産を毀損した
- 財産隠しをした
- 前回の自己破産免責から7年が経過していない
- 一部の債権者にのみ支払をした
- 管財人の業務に協力しなかった
- 裁判所へ虚偽報告をした
ただし免責不許可事由があっても実際には裁判所の裁量によって免責されることが多いので、現実に免責不許可になるケースは少数です。
免責許可される割合について
自己破産をして免責が許可される割合はどのくらいなのでしょうか?
2020年の日弁連の調査によると、免責不許可になった割合は0%、免責許可が降りた割合は96.8%以上とされます。
(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf)
これを見ると、取り下げなどしない限りほとんどのケースで免責許可が降りると考えて良いでしょう。
免責不許可になったらどうしたら良い?
もしも免責不許可になってしまったら、どう対応すれば良いのでしょうか?
この場合、任意整理や個人再生などの他の債務整理手続きをしましょう。
任意整理をすると利息をカットしてもらえますし、個人再生をすると元本ごと減額してもらえるので、借金を自力で支払いやすくなります。
任意整理と個人再生にはそれぞれ一長一短があるので、どちらが適しているかは弁護士に相談して決めましょう。
免責許可後にできること
破産して無事に免責許可が降りると、破産者は以下のようなことができます。
財産を形成できる
破産手続開始決定が下りると、その後に形成した財産は破産者本人のものになります。
破産手続開始決定後に発生した原因に基づいて得た財産は債権者へ配当されないので、自由に財産形成ができます。
自由に引っ越しや旅行ができる
免責許可決定によって居住制限が解除されるので、自由に引っ越しや旅行ができるようになります。
自由に仕事ができる
免責許可決定があると資格制限も解除されるので、自由に仕事を選べるようになります。
5年くらい経つとブラックリスト状態が解除される
免責許可決定があると5~10年程度で信用情報から事故情報が消去されるので、新たに借り入れもできるようになります。
まとめ
自己破産で免責を受けられれば借金などの負債を支払う必要がなくなります。免責許可決定後には何の制限もないので、自由に行動できるようになります。
払えないほどの借金を抱えているなら、免責を目指して早めに自己破産しましょう。
この記事の監修者
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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑