ギャンブルが原因の借金でも自己破産できる?
- パチスロや競馬などのギャンブルが原因で借金してしまった場合でも、自己破産できるのか?
- ギャンブル依存症で借金してしまったら、どうやって解決すればいいの?
こういった悩みを抱える方が少なくありません。
ギャンブルが原因の借金でも自己破産できる可能性はありますが、中にはできない場合もあります。
この記事ではギャンブルが原因の借金でも自己破産できるのか、できない場合の解決も含めて解説します。パチスロや競馬、競輪などにはまって借金してしまった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
ギャンブルが原因の自己破産、免責は受けられるのか?
ギャンブルが原因で借金してしまった場合、自己破産によって「免責」を受けられるかどうかが問題になります。
免責とは
自己破産をすると基本的に、すべての借金の支払義務がなくなります。
このように自己破産で借金支払義務がなくなる効果を「免責」といいます。
ただし自己破産したとき、すべてのケースで免責を受けられるとは限りません。
一定の場合、「免責不許可事由」に該当して免責してもらえない可能性があるのです。
ギャンブルが原因で自己破産するときにも免責不許可事由に該当する可能性があります。
免責不許可事由とは
免責不許可事由とは、該当すると免責してもらえなくなる一定の事情です。
以下のような事情が免責不許可事由に該当します。^
- ギャンブルや浪費によって借金した
- 投機行為によって借金した
- 財産隠しをした
- 債権者隠しや偏頗弁済(不公平な弁済)をした
- 破産管財人に協力しなかった
- 裁判所へ虚偽の報告をした
- 前回の破産免責から7年が経過していない
- 債権者に害を与える目的で財産を毀損した
- 破産手続きを遅らせる目的で不当に債務を負担した
ギャンブルも免責不許可事由の1つなので、ギャンブルによって借金を作ると免責してもらえないリスクが発生します。
破産法第252条4項(免責不許可事由)
浪費又は賭(と)博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
ギャンブルで免責不許可となるケースとは
ギャンブルが原因で借金した場合に免責不許可事由に該当するのは、具体的に以下のような行為によって借金をした場合です。
- パチンコやパチスロ
- 競馬、競輪、競艇
- 宝くじの購入
またギャンブルをしたからといってただちに免責不許可事由になるわけではありません。
問題になるのは「著しく財産を減少させ」または「過大な債務を負担した」場合です。
収入の範囲内で少しだけパチンコなどを行い、家計に影響を及ぼさなかった場合などには免責不許可事由には該当しない可能性があるといえるでしょう。
裁量免責で免責されるケースが多い
ギャンブルが免責不許可事由に該当する場合でも、免責してもらえる可能性が残されています。破産法には「裁量免責」という制度が認められるからです。
裁量免責とは、免責不許可事由があっても裁判官の裁量によって免責を認めても良い、とする制度です。
つまり債務者がしっかり反省して今後ギャンブルをする可能性がないなど裁判官としても「この人なら免責を認めても良い」と判断すると、たとえ免責不許可事由があっても免責を認めてもらえます。
裁量免責してもらいやすいのは、以下のような事情がある場合です。
- ギャンブルによって作った借金が少額
- 破産は初めてである
- 反省していてギャンブルはきっぱりやめている
裁量免責してもらえる割合
自己破産の件数のうち、裁量免責してもらえる割合はどのくらいなのでしょうか?
例年、自己破産の申立件数のうち90%以上が無事に免責を受けられています。この中には免責不許可事由のある人も多く含まれています。つまり免責不許可事由があってもほとんどの方は裁量免責を受けられているといえるでしょう。
裁量免責してもらえないのは、借金した金額が異常に多い場合やギャンブルをやめない場合、前回も同じ事情で裁量免責を受けた場合など一部の悪質な事例に限られます。
結論的にギャンブルによって借金を作っても免責してもらえる可能性が高いので、あきらめる必要はありません。
ギャンブルが原因の自己破産を認めてもらうための注意点
ギャンブルが原因で自己破産するときには、裁量免責を狙う必要があります。
以下で裁量免責してもらうために注意したいポイントをみてみましょう。
反省の態度を示す
1つはギャンブルで借金してしまった過去の行動について、反省の態度を示すことです。
しっかり反省していれば「この人はギャンブルを繰り返さないだろう」と思ってもらえて裁量免責を受けられる可能性が高くなります。
ギャンブルはやめる
今までギャンブルをしていた方も、裁量免責を受けたいならきっぱりやめるべきです。
ギャンブルをやめていないとせっかく破産を認めても更生が難しいと思われて、裁量免責してもらえないリスクが高まります。
ギャンブル依存症になってしまっているなら、心療内科やカウンセリングに通ったり自助グループに参加したりして、治療に取り組みましょう。
事情をしっかり説明する
ギャンブルをしてしまった理由がある場合、詳しい事情を説明すると裁量免責を受けやすくなるケースがあります。
たとえばギャンブル依存症になって一時的に借金してしまったけれども今はきっぱりやめている、ギャンブルしていた当時は収入があったので借金に頼る必要がなかった、などの事情があると有利にはたらきやすいでしょう。有利な事情は裁判所に説明して理解を求めましょう。
前回の破産で同じ原因で裁量免責してもらっていると難しくなる
自己破産が2回目以降の方の場合、前回も同じ理由で裁量免責してもらっていたら2度目の裁量免責は難しくなります。
ギャンブルを繰り返している以上、反省していないと思われるからです。
その場合には別の債務整理方法を検討した方が良いでしょう。
破産管財人による免責調査への対応
ギャンブルが原因で借金した方が自己破産を申し立てると、管財事件になる可能性が高くなります。
管財事件になると、破産管財人がついて免責に関する調査が行われます。
具体的には破産者は月に1回程度破産管財人と面談して、状況を報告しなければなりません。家計収支表の作成も毎月求められるのが一般的です。
このようにして「ギャンブルをやめてまじめに生活しているかどうか」が確認され、作成された管財人の報告意見をもとに裁判所が裁量免責してよいかどうかを判断するのです。
破産者としては、管財人の指示にきちんと従い反省の態度を示すことが大切といえます。
免責許可が出なかった場合の対処方法
ギャンブルによって作った借金額が大きい場合や2度目の自己破産などで裁量免責を受けられない場合、どのように対応したら良いのでしょうか?
この場合、個人再生や任意整理といった他の債務整理方法を検討するのが得策です。
個人再生をすると、借金返済額を大幅に減らしてもらえます。住宅ローン返済中の家がある場合、家を守って他の借金のみを減らすことも可能です。
任意整理をすると、将来発生する利息を全額カットしてもらえて返済額を減額できます。個人再生や自己破産と違って裁判所を介さず債権者と直接交渉する手続きなので、柔軟に対応できるメリットがあります。
個人再生でも任意整理でも借金の原因は問題にならないので、ギャンブルが原因の借金でも問題なく適用できます。免責不許可事由があって自己破産できない場合には有効な対処方法といえるでしょう。
まとめ
パチスロなどのギャンブルによって借金してしまった場合でも、多くの場合には裁量免責を受けられます。どうしても無理な場合、個人再生や任意整理によって解決する道も残されています。
ギャンブルによって借金してしまうときの根本的な問題を解決するため、依存症の治療が必要なケースも珍しくありません。
借金があって苦しい場合には、あきらめずに専門家に相談してみましょう。
この記事の監修者
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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑