サラ金の取り立てが違法行為になることは?会社への電話は合法?

サラ金の取り立てについて、合法的な流れと、違法だと疑われる例についてまとめました。サラ金は貸金業法によって規制を受けており、制限の範囲内で借金の取り立てを行うことができます。サラ金と闇金業者の違いや、違法だと疑われる取り立てを受けた場合の対処方法や相談先をご紹介します。サラ金からの取り立ては、弁護士に債務整理を依頼することでストップすることができます。

サラ金の取り立ては違法ではない

サラ金からの借金を滞納していると取り立てが行われますが、通常は、貸金業法に定められたルールにのっとって行われます。昔のテレビや映画、フィクション作品のような恐ろしい取り立てが行われることはありません。また、万が一違法な取り立てがされた場合は、相談先があり、逆に借金をした人に有利に話し合いを進められる可能性もあります。

サラ金(サラリーマン金融)とは、消費者金融のことで、かつてはサラリーマンに貸し付けを行うことが多かったので、サラ金と呼ばれるようになりました。消費者金融は、消費者向けに低額な融資を行う企業で、銀行や信用金庫などに比べて利息が高い分、無担保・無保証で現金を借りることができるという特徴があります。

日本では、貸金業を行う場合、必ず都道府県や財務局で「貸金業」の登録を行わなければなりません。合法的な消費者金融であれば、「貸金業法」という法律の規制を受けており、法律のルールの範囲内で、取り立て業務を行うことができます。

また、貸金業法を順守するために、大手のサラ金では社内に独自ルールを設け、マニュアルを作成するなどして違法性のない取り立てを行うのが一般的です。

※ここでは、借金をした人のことを債務者、借金を返す義務のことを債務と呼びます。

違法な取り立ての例

貸金業法21条には、取立て行為の規制について定めがあり、このルールに違反すると「違法な取り立て」として罰則の対象となります。主な「違法な取り立て」は以下の通りです。

暴力行為、大声で怒鳴る、乱暴な言葉で威嚇すること

脅迫にあたるような言動をもって取り立てを行うことは禁じられています。また、大勢で自宅に押しかけたり、しつこく繰り返し電話をしたりして取り立てるといった行為も禁止されています。

夜21時~翌朝8時までの時間に取り立てを行うこと

貸金業法21条1項には、「正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。」として、深夜・早朝など社会的に見て不適切な時間の取り立てが禁止されています。

債務者の勤務先や、住居以外の場所に連絡したり、訪問したりして取り立てを行うこと

基本的に、会社等の勤め先に電話をしたり、訪問したりしての取り立ては禁止されています。ただし、正当な理由がある場合は認められます。

正当な理由としては、「債務者の電話番号や住所などの連絡先が変更になってつながらないこと」が挙げられます。この場合は、会社に連絡するしか方法がないため、正当な理由となります。従って、消費者金融からの連絡をあえて無視し続けた場合は、会社に連絡がいくことがあると覚えておきましょう。

ただし、会社に電話をかけてきた場合でも、サラ金だとは名乗らずに個人名で電話をかけてきて、会社の他の人にサラ金だとは気が付かれないように配慮することが一般的です。

債務者以外の家族や友人などに借金を返済するよう要求すること

消費者金融の無担保の借金の返済義務は、あくまでも借金をした本人だけの義務です。家族や友人・知人など、借金の返済義務がない人に「あなたが代わりに支払ってください」と請求する行為は違法です。また、自宅に張り紙をするなど、債務者の周囲に借金があることを触れ回ったり、債務者以外に迷惑をかけたりするような行為は禁じられています。

ほかの金融機関からお金を借りて返せということ

借金を返済するために、他の金融機関からお金を調達しろと要求することは禁じられています。

サラ金が実際に行う取り立ての流れ

サラ金への返済を滞納した場合の一般的な取り立ての流れについてご説明します。通常、サラ金も最初のうちは穏やかに支払いを催促してくるので、怖いと感じることはほとんどないでしょう。

(1)携帯電話や自宅に電話が来る

サラ金への返済が滞ると「引き落としが確認できなかったのですが、口座に入金して頂けませんか」などと丁寧な連絡が来ます。うっかり入金を忘れることもあるので、最初から怒ったような口調でかけて来ることはまずありません。

自宅に電話をかける場合も、最初に個人名を名乗るなどして債務者のプライバシーに配慮がされます。

(2)郵便で督促が来る

電話に出なかったり、電話で催促しても入金がなかったりした場合には、自宅宛てに手紙やハガキで督促状が来るようになります。

ハガキで来る場合でも、圧着式や保護シールなどで内容までは家の他の人に読まれないよう、プライバシーに配慮がされるのが通常です。

差出人については、業者によって、企業名が記載されるパターンと、債務者に配慮して企業名が伏せられ、個人名で来るパターンとがあります。

(3)職場に電話

携帯や自宅への督促を無視し続けると、会社などの勤め先に電話がかかってくることがあります。この場合、「自宅や携帯に連絡しても応答がない」ということから、会社にかける正当な理由があると認められます。

(4)自宅に直接訪問する

中小の取り立ての厳しい消費者金融の場合、直接自宅に訪ねてきて取り立てを行うことがあります。貸金業法の規制では、時間帯の制限はあっても、自宅に訪問しての取り立て自体は禁止されていません。ただし、大手の消費者金融で自宅まで押しかけて取り立てを行うことはまずないでしょう。

(5)内容証明郵便による通知

督促を無視したまま2~3か月ほど経過すると、内容証明郵便で、「残債務と未払い利息および遅延損害金を一括で支払って下さい」と求める請求書が送られてきます。この請求書には、「対応して頂けない場合は裁判などの法的な手段に訴えます」と書かれているのが一般的です。

(6)債権譲渡の通知

サラ金によっては、滞納が長引き、お金を返してもらえそうにないと判断すると、債権回収業者(サービサー)に債権譲渡や取り立ての委託がされることがあります。借金などの債権は他企業に譲渡することができます。サービサーに債権譲渡や取り立ての委託がされた場合には、「今後はこちらに支払ってください」と債権回収会社から通知が来ます。

債権回収業者(サービサー)は、国によって認められたプロの取り立て業者です。暴力団などの反社会組織が関与することが無いよう、国の厳しい規制と監督を受けており、違法な取り立てをすることはありません。しかし、借金を返済しないと積極的に法的な手段をとってきます。

(7)法律にのっとり差し押さえが行われる

最終的には、サラ金は法律にのっとって債務者の給与などの財産について「強制執行」の手続きを行います。強制執行により給与が差し押さえられると、原則として手取り給与の4分の1が受け取れなくなります。また、勤め先に連絡がいくため、消費者金融からの借金を滞納し続けたことが会社に100%ばれてしまいます。

闇金業者との違い

サラ金は、貸金業法により登録された合法的な業者で、貸金業法の制限に従います。他方、「闇金」は、非合法の金貸しの犯罪組織で、貸金業法のような法律のルールには従っていません。

闇金は審査がなく、自己破産をした直後など、信用情報に傷がついている状態でもお金を貸してくれることがあります。しかし、その代わりに法外な利息を要求したり、執拗な取り立てや嫌がらせを行ったりして、生活が破綻してしまうことがあります。

また、借金の免除と引き換えに犯罪行為に加担することを要求されることがあります。もっとも多いのは、口座名義や携帯電話などの譲渡で、譲渡された口座名義や電話番号は様々な犯罪行為に使われます。

近年では、一見して健全なサラ金のように見える「ソフト闇金」と呼ばれる業者も存在して、闇金だと気が付かずにお金を借りてしまうこともあります。

万一、闇金からお金を借りてしまったら、借金を返済してはいけません。闇金の法外な金利での貸し付けは犯罪行為となるため、契約は無効になり、借金を返済する義務はなくなるからです。そのうえで、弁護士や警察に相談しましょう。

違法な取り立てをされた場合どうするか

合法的なサラ金からお金を借りたものの、取り立ての方法が違法ではないかと疑われる場合、以下の方法で対処することができます。

(1)貸金業者に「警察に通報する」と伝える

取り立てが悪質な場合は「警察を呼ぶ」と業者に伝えます。警察が介入してくると相手方としても厄介なので、この一言で悪質な取り立てがストップすることもあります。

例えば、以下のような言動をとられたら、実際に警察に相談しましょう。

  • 自宅に押しかけてきて「帰ってほしい」と言っても、帰ろうとしない
  • 勤務先に押しかけて「金を返せ」と周囲にわかるように言われる
  • 「殺すぞ」などと脅される
  • 家族に取り立てや脅迫を行う

警察に相談する際の注意点として、「民事事件なので介入できない」と言われてしまうことがあります。このようなケースに備えて、取り立てをしている業者が貸金業法に違反していることをきちんと説明できるように、スマホの録音機能で違法な取り立ての様子を録音したり、写真を撮ったりしておくなど、証拠を集めておきましょう。

(2) 日本貸金業協会に苦情申し立てを行う

貸金業法に関する自主規制機関である「日本貸金業協会」では、貸金業や個別の業者に関する相談や苦情等を「貸金業相談・紛争解決センター」において受け付けています。裁判外紛争解決手続(ADR)を行うことも可能です。

(3)弁護士などの法律の専門家に相談する

サラ金との借金問題のトラブルにおいては、借金問題に強い弁護士に間に入ってもらうことが強力な解決方法になります。弁護士は、債務者の依頼を受けてサラ金と交渉して借金減額などの手続きをとることができます。

サラ金は法律の専門家である弁護士に対し、違法な取り立てを行うことは出来ません。それどころか、取り立ての手法に違法性があった場合、弁護士はそれを指摘することにより債務者側に有利に借金減額交渉を行うことも可能です。

借金問題の相談先としては、弁護士の他に司法書士に相談することも可能ですが、司法書士の場合は1件当たりの債務額が140万円以下でないと取り扱うことが出来ません。これに対し、弁護士にはこうした制限はないので、迷ったら弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士に依頼するとサラ金の取り立てをストップできます

弁護士に任意整理などを依頼すると、サラ金からの取り立てをストップできます。弁護士は債務者から依頼を受けて借金の整理手続き(債務整理)を行うことができますが、その際、「受任通知」という書面をサラ金などの金融機関にあてて送付します。

受任通知を受け取ったサラ金等は、それ以降、債務者に直接連絡して取り立てを行うことが出来なくなります。以降、サラ金等の交渉は、弁護士が窓口となって行われます。この「直接連絡禁止」は、貸金業法21条に定められており、法律上のルールとなっています。

弁護士が行う債務整理には複数の種類があり、代表的なものには「任意整理」「個人再生」「自己破産」がありますが、いずれの手続きをとっても借金の取り立てをストップすることができます。

比較的借金問題の程度が軽く、利息や遅延損害金がなければ3~5年程度の分割払いで返済できるのであれば、「任意整理」が向いています。「任意整理」は、弁護士がサラ金等と私的に交渉して、利息カットや返済計画の見直しなどを求める手続きです。

借金問題の程度が重く、大幅な借金減額やカットが必要な場合は、裁判所を通じて「個人再生」や「自己破産」の手続きをとることができます。「個人再生」は、債務を5分の1(最大10分の1)大幅に圧縮できる手続きです。「自己破産」は、借金を帳消しにでき、収入のない人でもできる債務整理です。

「任意整理」「個人再生」「自己破産」はそれぞれにメリット・デメリットがありますが、弁護士に相談すればご自身の状況にあった借金の解決方法を提案してくれます。

サラ金の借金を滞納して、支払いに困っている際は、まずは弁護士事務所の無料相談を利用されることをお勧めします。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑