みなし弁済とは?過払い金との関係を解説!

過払い金請求について調べていると「みなし弁済」という言葉に出会うケースがよくあります。
みなし弁済とは、一定の状況下において「利息制限法を超える利率による支払いが有効となる」制度でした。みなし弁済が成立すると、消費者側が過払い金を取り戻せない可能性があるので、過去の裁判では貸金業者が頻繁にみなし弁済を主張していたのです。

ただしみなし弁済はすでに廃止されており、今の法律にはみなし弁済の規定はありません。

今回はそもそもみなし弁済とは何なのか、みなし弁済と金利や過払い金請求の関係について解説します。

過払い金請求をご検討の方はぜひ参考にしてみてください。

みなし弁済とは

みなし弁済とは、利息制限法を超える金利を支払った場合でも、債務者が任意で払ったなどの条件を満たす場合に有効とみなされる制度です。改正前の法律(旧貸金業規制法)に規定されていたもので、現在は撤廃されています。

みなし弁済が適用されると、利息制限法を超えて高い利息を払った場合でも有効になってしまいます。そこで多くの貸金業者は、みなし弁済規定を根拠に利息制限法を超える高い金利で貸付を行っていました。

みなし弁済が成立するための要件

みなし弁済が成立するための要件は、次のとおりです。

  • 貸付者が貸金業登録した貸金業者である
  • 貸付の際、貸金業規制法17条の要件を満たす書面(いわゆる17条書面)を借主に交付した
  • 貸金業者が消費者から弁済を受領した際、貸金業規制法18条の要件を満たす書面(いわゆる18条書面)を借主に交付した
  • 借主が「利息の支払いである」と認識して任意に高い約定利息を支払ったこと

このように、借主側が「高額な利息を自ら払った」場合で、かつ貸金業者側から「17条書面」「18条書面」という2種類の書面が交付されたとき、みなし弁済規定が有効になると定められていました。

みなし弁済とグレーゾーン金利の関係

過去に多くの貸金業者が貸し付けの際に適用していた金利を「グレーゾーン金利」といいます。
グレーゾーン金利とは、「利息制限法を超えて出資法未満」の金利帯です。
利息制限法には罰則がありませんが、出資法を超える金利を適用すると罰則が適用されます。万が一みなし弁済が成立しなくても、グレーゾーン金利の範囲内なら業者側に罰則が適用される危険がありません。

そこで消費者金融やクレジットカード会社などはグレーゾーン金利帯の利率で貸付を行っていたのです。これが現在の過払い金請求のもととなっています。

利息制限法による上限金利

  • 借入額が10万円未満…年率20%まで
  • 借入額が10~100万円未満…年率18%まで
  • 借入額が100万円以上…年率15%まで

上記の利息制限法の上限に対し、みなし弁済を根拠にして多くの貸金業者が適用していた利率は29.2%やそれに近い高額なものでした。

みなし弁済による多重債務の発生やまん延

多くの貸金業者が「みなし弁済」規定を根拠に年率20%台後半の高額な利率を適用したため、利用者の多数が返済不能に陥りました。
自分の収入だけでは支払いができないため、他社から借り入れて返済する、いわゆる「自転車操業」に陥る人も多かったのです。

自転車操業とは、1社から借り入れをして別の貸金業者に支払を行い、その支払日が来たらまた別の1社から借り入れをして資金を用意する、といった対応方法です。
単に借金を回しているだけなので、一向に借金が減りません。むしろ高額な利息の分、借入残高が膨らんでしまいます。

みなし弁済を根拠としてグレーゾーン金利が適用されたため、日本では多重債務者がたくさん発生し、まん延状態となってしまったのです。大きな社会問題となり、是正を求められている状況となりました。

みなし弁済と過払い金裁判

消費者側と業者側は、多くの裁判で「みなし弁済」に関する争いを繰り広げました。
みなし弁済が適用されるには、一定の要件を満たさねばならなかったためです。
業者側は「みなし弁済が適用される」と主張しましたが、消費者側は「要件を満たさない」と主張して争いました。よくあったのは、たとえば以下のような事例です。

  • 貸金業者側が交付した17条書面の効果が争われた
  • 貸金業者が交付した18条書面の効果が争われた
  • 債務者が任意に払ったものではないと主張された

消費者側が勝つ裁判もありましたが、業者側が勝訴する裁判もありました。
消費者側が勝てば過払い金を請求できますが、業者側が勝てば過払い金請求ができずに借金返済を続けなければなりません。

そういった「みなし弁済」を巡って争いが生じる状況が平成17年頃まで続いていたのです。

平成18年1月13日の最高裁判決によってみなし弁済が事実上無効になる

そんな中、平成18年1月13日、最高裁にてみなし弁済規定に関する決定的な判決が降りました。
この判決は、みなし弁済規定を「事実上無効」とした画期的なものです。
つまり、債務者が「高額な利息と知りながら任意に支払うことなど通常想定し難い」という理由で、みなし弁済規定を適用する余地をほとんどなくしました。

最高裁が「みなし弁済規定は事実上無効」ともいうべき判断をしたため、下級審もそれに従いましたし、国会でも法改正の必要性が急遽クローズアップされました。

法改正によってみなし弁済が撤廃される

平成18年1月13日に最高裁で「みなし弁済規定が事実上無効」と判断されたため、貸金業法からみなし弁済の規定を撤廃する必要性が高まりました。
またこれを機会に問題の大きかったグレーゾーン金利も撤廃することになったのです。
つまり、以下のような法改正が行われました。

  • 貸金業規制法から「みなし弁済」規定を撤廃する
  • 出資法の上限利率を利息制限法に一致させて年率20%とする

このように法改正が行われたため、みなし弁済によって利息制限法を超える利率が有効であると主張される可能性はなくなりました。
また利息制限法の上限と出資法の上限を一致させたため、グレーゾーン金利もなくなりました。

この他、借金の総量規制の導入なども行われ、多重債務者が発生しないように対策が行われています。これらの改正法が施行されたのは2010年6月18日です。

多くの貸金業者が法改正を見越して2008年頃からはグレーゾーン金利における貸付を停止しました。そこで過払い金が発生するのはおおむね2008年頃までの取引となっています。

現在の「みなし弁済」の状況

現在の法律ではみなし弁済規定が存在しません。
よって、現在過払い金請求をするときに「みなし弁済」によって否定されるケースは存在しないと考えましょう。過払い金請求をするときにみなし弁済をおそれて躊躇する必要性は、まったくありません。

過払い金請求できるケースとは

今は「2008年頃以前から貸金業者と取引をしていた」だけで過払い金を取り戻せる可能性が高い状況です。

具体的には以下のような借金をしていたら、過払い金が発生する可能性が高いといえます。

  • クレジットカードのキャッシング
  • 消費者金融やカード会社のカードローン
  • 消費者金融のキャッシング

貸金業者名を覚えていなくても過払い金を取り戻せる可能性があります。

ただし過払い金請求権には時効も適用されるので、心当たりのある方は早めに対応すべきです。また自分で過払い金請求をしても交渉で不利になってしまうケースが多いので、過払い金請求するときには弁護士などの専門家へ依頼しましょう。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑