過払い金請求の裁判を起こすメリットとデメリット、流れについて

過払い金請求で相手業者との交渉が難航すると「交渉を打ち切って裁判したほうがいいのか?」と迷ってしまう方がたくさんいらっしゃいます。

確かに裁判を起こした方が高額な過払い金を返してもらえる可能性がありますが、裁判にはデメリットもあるのでケースバイケースで判断しましょう。

今回は過払い金請求の裁判を起こすメリットやデメリット、裁判した方が良いケース、流れについて解説します。

相手業者との交渉がうまく進まなくなってお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

過払い金の返還請求方法は訴訟(裁判)と交渉

過払い金請求を行う方法としては、大きく分けて交渉と訴訟の2段階があります。

交渉とは

通常はまず相手業者と直接交渉を行い、和解による解決を目指します。

和解ができれば合意書を作成し、速やかに過払い金を返してもらえます。

ただし交渉の場合、相手から大幅な過払い金の減額を主張されるケースも多いので、思ったほど高額な過払い金を受け取れない可能性もあります。

 

裁判とは

交渉が決裂すると、訴訟(裁判)を起こして過払い金を請求しなければなりません。

裁判をして勝訴した場合,裁判所が相手業者へ過払い金の支払いを命ずる判決を下すこととなります。相手が納得しなくても判決が出ますし、相手に支払い能力がないからといって過払い金が減額されることもありません。

 

過払い金請求の訴訟(裁判)と交渉、返還額が大きくなるのはどっち?

過払い金請求をするとき、交渉と訴訟ではどちらの返還額が大きくなるのでしょうか?

 

訴訟の方が返還額は高くなる

基本的に訴訟(裁判)を起こした方が返還額は高額になります。

交渉すると通常、相手業者は100%の過払い金返還に応じません。

「資金が足りない」「経営が苦しい」「一律で○○割返還の対応をしている」などとさまざまな理由をつけられて減額されます。

専門家が対応しても「多くて元本の8割程度」の返還しか受けられないのが一般的でしょう。遅延損害金は全額カットされます。

 

一方過払い金訴訟を起こすと、判決では100%の返還が命じられます。

さらに遅延損害金も加算されるので、訴訟を起こすと大きく過払い金の金額がはねあがるケースも少なくありません。

 

過払い金の訴訟を起こした場合のメリットとデメリット

過払い金訴訟を起こすメリットとデメリットをお伝えします。

メリット

高額な支払いを受けられる

1つ目は返還額が高額になることです。たとえば100万円の過払い金が発生していても、和解なら「元本の6割しか返還しない」といわれたケースを考えてみましょう。

訴訟を起こすと100万円と遅延損害金を請求できるので、交渉段階の2倍近い金額を払ってもらえる可能性もあります。

 

遅延損害金が加算される

訴訟を起こして判決を得ると、遅延損害金が加算されるので元本以上の支払いを受けられるのもメリットです。

 

一括払いになる

交渉によって解決する場合、必ずしも過払い金を一括払いしてもらえるとは限りません。相手業者の都合で数回の分割払いになる可能性もあります。

訴訟であれば基本的に一括払いとなるので、入金確認の手間も省けます。

 

判決が出たらすぐに支払われる

訴訟で判決が出たら、過払い金はすぐに支払われるのが一般的です。遅れるとその分遅延損害金がかさんでいくためです。和解の場合には、和解後数か月たってからしか入金されないケースもあるので、早く支払ってもらえるのは訴訟のメリットといえるでしょう。

 

ただし訴訟の場合「判決が出るまでに長い時間がかかる」ので、早期の解決には向きません。

あくまで「判決が出たらすぐに払ってもらえる」という意味にとどまります。

 

デメリット

労力がかかる

訴訟には多大な労力がかかります。自分で対応する場合、たくさんの書類を作成したり提出したりしなければなりません。毎回裁判所へ出頭する必要もあります。

ただ弁護士や司法書士へ依頼したら、ほとんど自分では何もしなくても訴訟を進められますし、期日へ出頭する必要もありません。

 

時間がかかる

訴訟には長い時間がかかります。

交渉で解決できれば半年程度で終わる事案でも、訴訟になれば1年以上かかるケースが少なくありません。

 

費用がかかる

裁判を弁護士や司法書士に依頼すると、費用が発生します。

多くの事務所では交渉段階よりも訴訟段階の報酬率が高めに設定されているので、手取り額が少なくなる可能性があります。

 

状況によっては判決が出ても支払いを受けられない

相手業者が倒産したり、相手が悪質で逃げてしまったりすると、判決が出ても支払いを受けられない可能性があります。

 

過払い金請求訴訟にかかる裁判費用はどのくらい?

過払い金請求訴訟にかかる費用には、実費と弁護士費用や司法書士費用があります。

実費

印紙代

請求金額に応じた印紙代が発生します。

たとえば10万円までなら1000円ですが、50万円なら5000円、100万円請求するなら1万円分の印紙が必要です。

郵便切手代

被告1社について6000程度の郵便切手が必要です。

 

弁護士や司法書士の費用

着手金と基本報酬金

1社につき着手金や基本報酬金として4~5万円程度かかるのが一般的です。

過払い報酬金

回収した金額の25%程度が過払い報酬金として差し引かれます。

交渉段階なら過払い報酬金が20%とされる事務所が多数ですが、裁判になると25%にアップするケースが多くなっています。

 

過払い金請求裁判の流れ

過払い金請求の裁判は以下のような流れで進みます。

STEP1 準備

まずは訴訟の準備をしましょう。訴状を作成して利息制限法への引き直し計算を行い、資料を整える必要があります。自分で対応できない場合、弁護士や司法書士へ依頼しましょう。

STEP2 訴訟提起

書類が揃ったら訴訟を提起します。

STEP3 第一回期日、その後の争点整理

訴状が受け付けられると、第一回期日が指定されます。

期日に出頭すると、次の裁判期日が決まり、その後の裁判期日においてお互いが主張立証を繰り返していきます。

STEP4 判決

お互いの主張立証が完了したら、裁判所が判決を下します。

 

STEP5 過払い金の回収

判決が出たら、判決内容に応じて相手から支払いを受けます。

 

適宜の和解

裁判の途中で裁判官の勧告などにより、和解するケースもよくあります。その場合、遅延損害金はカットされますが交渉段階よりは高額な支払いを受けられるのが一般的です。

 

過払い金裁判でよくある争点

過払い金請求訴訟では、以下のような争点が問題になる事例が多くなっています。

取引の分断

いったん債務を完済して再度借り入れをした場合「取引の分断」があると主張されるケースが多々あります。

分断すると、一連取引よりも過払い金額が少なくなるのが一般的です。また分断前の取引による過払い金に時効が成立してしまう可能性もあります。

 

ただし一時的に完済状態になったからといって、必ずしも取引が分断されるわけではありません。弁護士に分析と対応を依頼して、消費者側に有利な主張を展開してもらいましょう。

 

相手が悪意の受益者かどうか

被告が悪意の受益者かどうかが問題となるケースもあります。悪意の受益者とは「過払い状態となっていたことについて知っていた」という意味です。

相手業者が悪意の場合、消費者へ「過払い利息」をつけて返還をしなければなりません。相手業者としては「悪意ではなかった」と主張して支払額を減らそうとするのです。

ただしこういった抗弁は裁判で認められないケースも多いので、相手から主張されたら法的な根拠により否定しましょう。

 

過払い金の裁判で相手業者から法律的な反論をされたら、素人対応では不利になるリスクが高まります。無理に自分で対応して負けてしまっては裁判する意味がありません。早めに弁護士や司法書士などの専門家に依頼してみてください。

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑