任意整理による減額効果はどのくらい?利息や元本、借金を減額できないケースとは?
「任意整理すると、どのくらい借金が減るのだろうか?」
「任意整理しても借金が減らないケースがあるの?」
そんな疑問を抱える方が少なくありません。
任意整理によって大きく借金を減額できる方もいれば、そうでないケースもあります。
今回は任意整理による減額効果、元本や利息に対する影響、任意整理が向いている人とそうでない人について解説します。
任意整理で減額可能なお金の種類
まずは任意整理をするときにはどのようなお金が減額されるのか、理解しておきましょう。
任意整理は「債権者と直接交渉をして借金の返済総額を減額してもらう手続き」です。債権者の対応により、どこまで減額されるのかは変わる可能性があります。ただ一般的には以下のような支払いが減額されるケースが多数です。
利息
債権者と合意した後に発生する将来利息は通常、全額カットされます。
たとえば300万円の借金のある人が任意整理をすると、毎月支払っている利息が全部カットされて「300万円の元本のみ」を返済すれば良い状態となります。
また任意整理の交渉中に発生する経過利息もカットしてもらえるケースがあります。ただし経過利息については必ず全額カットしてもらえるとは限らず、債権者によっても対応が異なる可能性があります。
遅延損害金
任意整理をすると、もともとの約定通りには支払いをしなくなるので「遅延損害金」が発生するのが原則です。ただし合意が成立すると、遅延損害金はカットしてもらえます。
元本
一般的な任意整理では、借金の元本が減額されません。
「借り入れた金額については原則的に全額返済しなければならない」と考えましょう。
たとえば現在100万円の借り入れがあれば、100万円については支払わねばなりません。
元本まで減額できるケースとは
任意整理により、元本まで減額できるケースもあります。
それは、過去に利息制限法を超過する高い利息を払っていた方です。
この場合、過払い金が発生するので元本へ充当し、元本を減らせます。
どこまで減るかはケースバイケースですが、過払い金の金額が多い場合には「払いすぎ」となり、お金を取り戻せる可能性もあります。およそ2008年頃以前から貸金業者と取引していた方は過払い金が発生している可能性が高いので、早めに任意整理を行いましょう。
毎月の返済額
任意整理をすると、毎月の返済額も減額される例が多数です。
任意整理によって利息がカットされ借金の総返済額が減るだけではなく、支払期間も延長できるケースが多いからです。
たとえば借金の元本が200万円残っている方が任意整理で5年返済を設定した場合、毎月の支払額は33,300円程度になります。現状と比べると返済金額が減る方が多いでしょう。
任意整理後の返済期間
任意整理後の返済期間は一般的に3~5年間です。
3年より短くすることは可能ですが、5年より長くしてもらえるケースは少ないと考えましょう。
毎月支払いをするので、3年なら36回払い、5年なら60回払いとなります。
元本を60回払いで支払えるなら、借金問題を解決できる可能性が高い状況といえるでしょう。
任意整理による減額事例
任意整理をするとどこまで借金が減額されるのか、具体的な事例で確認しましょう。
ケース1 100万円の借金があり24回払い(2年の返済予定)、年利15%で返済していた方
もともとの約定によると、毎月の支払額は48,486円、利息の総額は163,668円となります。
任意整理をして60回払い(5年)にすると、毎月の支払額は16,700円となって総返済額は100万円まで減額できます。
毎月の支払額は3分の1程度となり、総返済額も163,668円減るので、大きなメリットを得られるケースといえます。
ケース2 借入額が150万円、36回払い(3年の返済予定)、年利15%で返済していた方
この場合、もともとの約定では毎月の支払額が51,997円、支払利息が371,916円、総支払額は1,871,916円となります。
任意整理をすると、利息の371,916円を全額カットできるので、大きく返済額が減ります。
5年払いにすると月々の返済額は25,000円となり、これまでの半額以下にまで減額できます。
やはり任意整理をすると大きな効果を得られるパターンといえるでしょう。
任意整理しても借金が減らないケースとは
以下のような場合、任意整理をしてもあまり借金が減額されません。
利率が低い
任意整理の主なメリットは、将来利息が全額カットされる点です。
利率が低い借金の場合、任意整理をしてもあまり将来利息が減りません。減額効果は小さくなります。
借金額が小さい
借金額が10万円などの少額な場合、任意整理をしてもあまり意味がありません。
もともとの利息の額も小さく、ほとんど返済額が変わらないからです。
借金額が大きすぎる
反対に借金額が大きすぎても任意整理に失敗する可能性が高まります。
任意整理をしても元本は返済しなければならないからです。
たとえば1000万円の借金を任意整理するのは通常難しいので、個人再生を検討した方がよいでしょう。
債権者が任意整理に応じない
任意整理は債権者と直接交渉をして借金を減額してもらう手続きです。債権者が減額に応じなければ失敗します。
任意整理をした方が良い人
以下のような状況であれば、ぜひ任意整理を検討しましょう。
クレジットカードやカードローン、消費者金融など利息の高い借金が多い
クレジットカードやカードローンなどの借金では、10~18%程度の高額な利息が設定されているケースが多数です。
任意整理すると利息を全額カットしてもらえるのでメリットが大きくなります。
消費者ローンを利用しているなら、早めに任意整理を行いましょう。
借金の金額が300万円以下
借金の金額があまりに大きすぎると任意整理は適しません。収入(返済能力)にもよりますが、300万円以下の方であれば任意整理に適しやすいでしょう。それを超える場合、任意整理で解決可能か専門家とよく相談すべきです。
過去(2008年頃)以前から貸金業者との取引を続けている
2008年頃以前から貸金業者と取引している方は、過払い金請求できる可能性があります。このまま返済し続けるより明らかにメリットが大きいので、早めに専門家へ相談しましょう。
保証人に迷惑をかけたくない
任意整理以外の債務整理をすると、債権者が保証人へ請求してしまうので保証人に迷惑がかかります。任意整理であれば対象となる債権者を選べるので保証人付きの借金を外して整理できます。そうすれば保証人に迷惑をかけずに済むメリットがあります。
保証人に迷惑をかけたくないなら任意整理を検討してみてください。
任意整理をしない方が良い人
以下のような方は任意整理があまり適さない可能性があります。
- 借り入れの大部分が奨学金や住宅ローンなどの利率が低く金額の大きな借金である
- 債権者が強硬で任意整理の話し合いに応じない
- 収入がなくて任意整理後の支払いができない
任意整理のポイント
最低限の収入は必要
任意整理をすると借金を減額してもらえますが、定められた支払いを継続しなければなりません。減額後の借金を支払うだけの最低限の収入は必要です。
ただしアルバイトやパートの収入でも返済できれば良いですし、主婦の方なら夫の収入から返済してもかまいません。
支払いは遅れずに
任意整理後の支払いが遅れると、債権者から督促が来ます。
1、2回程度であれば待ってもらえるケースが多数ですが、度重なると待ってもらえなくなり残高を一括請求されてしまうでしょう。そうなったら自己破産しなければならない可能性もあります。
任意整理をしたら、必ず遅れないように支払いをしましょう。状況が変わって支払いが難しくなったら、放置せずに弁護士へ相談してみてください。
この記事の監修者
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中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑