サービサーとは 債権回収会社への対応方法

サービサーとも呼ばれる債権回収会社への対応方法についてまとめました。借金などの債務を滞納し、債権回収会社から通知が来た場合は、まず正式な債権回収会社かどうか確認しましょう。紛らわしい名前の詐欺集団も存在しますので注意が必要です。確認の方法や、債権回収会社に渡る債権の種類、債権回収会社による債権回収の流れ、債権回収会社への対処方法などを概説します。

サービサーとは債権回収会社のこと

サービサー(債権回収会社)とは、金融機関や貸金業者、クレジットカード会社などから委託されたり債権を譲り受けたりして、お金を借りた債務者に取り立てを行って債権を回収する企業のことです。

債権とは、ここではお金を支払ってもらう権利のことです。また、債権者とは債権を持っている金融機関などのことを指します。逆に、お金を払う義務のことを債務、お金を支払う義務を負っている人のことを債務者と呼びます。

債権の回収は本来、債権者が債務者に対して行うものですが、「なかなか返してくれない」「連絡が取れない」と債権者が取り立てに困った場合、債権回収会社が代わって債務者に取り立てを行います。

債権回収会社から通知が来たときは

債権回収会社には正式な債権回収会社とそうでない会社があり、「債権回収会社」と書かれた企業から通知が来たときは、まず、国によって認められた正式な会社かどうかを確認しましょう。正式なサービサーは令和5年7月1日時点で全国に75社しかありません。

返済や支払いを滞納していると、それまで連絡が来ていた金融機関などからではなく、「債権回収会社」と書かれた見知らぬ企業から通知が来た、というケースがあります。

この際、正式な会社かどうか確認せずに対応すると、実は詐欺集団であって、お金を騙し取られるおそれもあります。

かといって、正式なサービサーからの通知にもかかわらず「見覚えのない会社だから」と無視すると、裁判所からの支払督促や差し押さえといった事態に進んでいきます。そのため、確認はしっかり行いましょう。

正式なサービサーの確認方法

正式なサービサーであれば、法務省のホームページに名前や連絡先が載っています。下記のサイトで確認してください。

「法務省:債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧(https://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html)」

重要なのは、会社の名前(商号)が一言一句合っているかだけではなく、本店所在地や電話番号が正しいかチェックすることです。住所や電話番号が間違っている場合、詐欺の可能性が高くなります。

また、請求されている債権が身に覚えがあるものかどうかも、必ず確認してください。出会い系サイトやアダルトサイトの請求が債権回収会社からくることはありません。また、保証人になっていない限り、家族・親戚などの債権を請求されることもありません。

通知に少しでも不審な点、怪しいと思ったところがあれば、業者に直接連絡しないで、最寄りの警察署などしかるべき機関に相談して下さい。詐欺に引っかかると、支払ったお金が返ってこないだけではなく、繰り返し金銭の請求をされる恐れがあります。

詳しくは、法務省が注意喚起を行っておりますので、参考にしてください。

「法務省:債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求に御注意ください (https://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa19.html)」
「法務省:債権回収会社を詐称している等との情報の提供があった業者名の例一覧 (https://www.moj.go.jp/content/001353589.pdf)」

正式なサービサーは違法な取り立てをしてくることはない

サービサーは「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」という法律に基づいて、債権の管理や回収を業として行うことができる会社のことです。国から認定されたサービサーならば、違法な取り立てをすることはないので、落ち着いて誠実に対応しましょう。事情によっては交渉に応じてくれることもあります。

借金の取り立てというと、脅迫を用いた攻撃的な督促や、暴力団が絡んだ強引な取り立てを想像しがちですが、サービサー法はそのような違法な取り立てが行われることがないように、正式な債権回収会社として厳しい条件を設け、条件が整った会社だけをサービサーとして認定しています。

代表的な条件としては、「資本金5億円の株式会社であること」「暴力団とかかわりがないこと」「常務として従事する取締役に弁護士が1名以上いること」などがあります。

資本金が5億円以上となると、会社法上の大会社となるため、公認会計士や監査法人による会計監査が義務付けられ、定期的にチェックを受けています。

また、債権回収会社は、認可された後も法務省や警察庁の立ち入り検査、取締役弁護士選任にあたっては弁護士会から推薦された弁護士を選ぶなど、違法な取り立てが行われることがないよう、様々な仕組みにより監視されています。

弁護士から債権回収の通知が来ることがある?

サービサー法が施行され、認可を受けた企業が債権回収を行えるようになる前は、弁護士が債権回収を行っていました。今も、多くの弁護士が債権回収業務を行っています。そのため、支払いを滞納していると弁護士から連絡が来るケースもあります。

債権回収会社からの通知と同様に、相手先の住所氏名や債権の請求内容などに問題がないか確認し、気になる点があればこちらも弁護士に相談するのが良いでしょう。

債権回収会社に渡る債権はどういうものがあるのか

債権回収会社が取り扱える債権は「特定金銭債権」と言って、主に以下のような債権があります。

  • 金融機関等が持っている貸付債権
  • リースやクレジットカードの債権
  • ファクタリング業者が持っている金銭債権
  • 法的倒産手続中の者が持っている金銭債権
  • 資産の流動化に関する金銭債権
  • 保証契約に基づく債権

サービサーは法律に基づいて債権回収ができるといっても、すべての債権を回収できるわけではなく、上記のような一部の金銭債権に限られます。元々は、バブル崩壊後の不良債権の回収を推進するための制度でしたので、銀行等の貸付債権がメインになっています。

アダルト系に限らずインターネットの動画視聴料等の債権は、サービサーが取り扱える債権ではないので、こうした債権を回収するとの通知が来たら詐欺です。絶対に金銭を支払わないようにしてください。

債権回収会社の債権回収の流れ

サービサーの債権回収は、一般的には次のような流れで進んでいきます。

(1)債権者からの督促
(2)債権回収会社への債権譲渡の通知
(3)債権回収会社からの督促
(4)債権回収会社による支払督促の申立て
(5)(異議申し立てをした場合)債権回収会社との訴訟
(6)差し押さえなどの強制執行

(1)債権者からの督促

まず、金銭の支払いが滞ると、債権者である金融機関やカード会社が直接債務者に電話や郵便などで支払いを催促してきます。これに応じないでいると、支払いを求める旨を記した内容証明郵便が届きます。

内容証明郵便とは、郵便物が「いつ」「誰から誰に対し」「どんな内容で」差し出されたかを郵便局が証明してくれるサービスです。

内容証明郵便自体には強制執行のような法的効果はありませんが、時効の完成を6か月間遅らせる効果のほか、債務者にことの重大性を感じさせ、お金を支払うようにプレッシャーを与える効果があるとされています。

(2)債権回収会社への債権譲渡の通知

通常の督促や内容証明郵便でも効果がなかった場合、金融機関等から債権回収会社に債権が移ったという通知が届きます。

元の債権者から債権回収会社に債権が移る方法としては、「債権譲渡」と「代位弁済」の二つがあり、どちらの方法によるかによって時効の長さや元本などが違ってきます。

(3)債権回収会社からの督促

債権回収会社がお金を支払うように電話や郵便などで繰り返し督促してきます。自宅を訪問することもあります。

(4)債権回収会社による支払督促の申立て

債務者が督促にも応じず金銭を支払わなかった場合、サービサーは簡易裁判所に支払督促の申立てを行います(支払督促ではなく,訴訟を提起してくることもあります。その場合は,下記の(5)の手続となります。)。支払督促手続は、申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じるという制度です。

  • 相手方の言い分を聞かずに金銭の支払いを命じることができる
  • 書類審査のみで裁判所に出向かずに手続きを進められる
  • 手数料が訴訟の半分

など、債権者側にメリットの多い手続きのため、法的な取り立て手段として広く利用されています。他方、相手方の債務者は支払督促に対して異議申し立てをすることができます。2週間以内に異議申し立てをしなかった場合、申立人は「仮執行宣言」を得て、差押えなどの強制執行の申立てを行うことができます。

支払督促については、詳しくは政府広報オンラインのページもご覧ください。

「政府広報オンライン:「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ
簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201504/1.html)」

(5) (異議申し立てをした場合)債権回収会社との訴訟

債務者から支払い督促に対し、2週間以内に異議申し立てがあった場合、民事訴訟に移行します。紛争の対象となっている債権の金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所で行われます。訴訟になると、裁判所から債務者に訴状が送達され、答弁書の提出を求められます。

答弁書を提出しなかったり、裁判所への出頭を拒んだりした場合は、債権回収会社の言い分を全て認めたものとみなした判決が出されます。

(6)差し押さえなどの強制執行

支払督促に異議申し立てをしなかった場合や、訴訟において債権回収会社が勝訴し、それでも支払いを拒んでいると、財産や給与の差し押さえなど強制執行がなされることがあります。

差し押さえは、債権者が判決などの債務名義を得た場合、その申立てに基づき、裁判所が強制的に債権者に代わって債権を回収する手続です。

具体的には、債務者の勤め先から直接給料を差し押さえたり、銀行預金を差し押さえて直接取り立てたりすることができます。給与の場合は、原則として債務者の手取り給料の4分の1が差し押さえられます。(※ただし、債務者の月給が44万円を超える場合には、33万円を除いた金額となります)

強制執行については、裁判所のホームページにも解説が載っていますので参考にしてください。金銭債権の差し押さえの場合、主に「(3)債権執行手続」の項目に記載があります。

「裁判所:民事執行手続(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_02_01/index.html)」

債権回収会社から連絡があった場合、どう対処すべき?

債権回収会社から連絡があった場合は、まず、正式なサービサーなのかネットで確認を取ります。正式なサービサーだった場合は、債権が消滅時効を過ぎていないかチェックします。そのうえで、債権回収会社の請求には真摯に対応しましょう。

※消滅時効とは

企業から借りた借金のような金銭債権は、原則として、債権者が権利を行使しなかったときから5年で時効消滅します。債務者が、時効による利益を受けると相手方に伝えることを「時効の援用」と言います。とはいえ、企業からの借金の場合、企業が5年間も債権を放置しておくことは考えにくいので、時効の援用が出来る状況は少ないのが実情です。

また、債権が債権者からサービサーに移るときの方法が「債権譲渡」か「代位弁済」かによっても、時効成立のタイミングが違ってきます。

「債権譲渡」であれば消滅時効期間は前の債権者から引き継がれ、前の債権者からあわせて5年で消滅しますが、「代位弁済」の場合、債権がサービサーに移った時点で時効期間はリセットされ、代位弁済の時点から5年たつまでは時効になりません。

相手が正式なサービサーであり、時効の成立の可能性もない場合は、真摯に対応して金銭債権の返済に応じましょう。金銭債権の返済に困るような事情がある場合、正式な債権回収会社であれば、早めに相談すれば借金の利息カットなどの減額交渉に応じてくれることもあります。

サービサーとの交渉は弁護士に依頼したほうが有利になる

借金の減額交渉やリスケジュールについては、弁護士に依頼して交渉してもらったほうが、より債務者に有利な話し合いをしやすくなります。弁護士が債権者と私的に交渉して借金や遅延損害金の利息カットなどをしてもらうことを「任意整理」と言います。

サービサーから連絡が来るということは、すでに支払いを滞納してしまっているということなので、金銭債権には利息の他に遅延損害金も発生しています。弁護士に頼めば遅延損害金をカットできる可能性もありますので、元々の金銭債権の金額が高いほど弁護士に頼んだほうが良いでしょう。

任意整理を弁護士に頼むと、督促や取り立てはストップし、サービサーが直接債務者に連絡をしてくることはなくなります。以降サービサーからの連絡は弁護士に行くことになります。その意味でも、弁護士に依頼されることをお勧めします。

 

この記事の監修者

弁護士 河東宗文
弁護士 河東宗文
中央大学大学院法学研究科⺠事法専攻博士前期課 程修了
前東京地方裁判所鑑定委員、東京簡易裁判所⺠事 調停委員
東京弁護士会公害環境特別委員会前委員⻑